名著ですが解説が少ないという評判の「基礎英語長文問題精講」の解説を補足しています。本書の解説と別冊の解答・解説をよく読んだ上で、疑問点がある方は是非参考にしてください。
本文
3行目:different than
many of the problems at … are different … than those of the past
【和訳】…の問題の多くは、過去の問題と異なっている
different という形容詞は、本来の語法では different from となるべきですが、主にアメリカ英語で from の代わりに than が用いられることがあり、different than という形も正しいとされつつあります。「~と異なる」という意味的にも、different は 比較級にならずとも比較級のニュアンスを表現できる一種の比較表現と考えられます。
また、than の後ろの those にも注目してください。この those が指しているものは the problems ですが、比較の対象を揃えるために代名詞が使われています。以下のような比較の文法問題でお馴染みの法則です。
例:
- The population of Tokyo is larger than that of Osaka.(… than Osaka. は不可)
4行目-:文構造
Up until recently, most of our problems concerned the struggle
┌<of people and societies>
├<to feed themselves,
┤ and
└<to overcome or prevent diseases and natural disasters>.
【和訳】最近に至るまで、我々の問題のほとんどは、人々や社会が、自分が食べるものを得るために、また病気や自然の災害を克服したり防いだりするために行う闘争に関わるものだった。
【ポイント】
- struggle of people and societies は意味的に V-S 関係(人々や社会が行う闘争)
- to feed … and to overcome or prevent は、the struggle を修飾する不定詞の形容詞的用法。動詞-目的語 の struggle to do(~しようと苦闘する)から派生したつながりであることに注意
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10行目:she が指す名詞
この she は 9行目の Nature(自然)を指しています。このような無生物の名詞を指す代名詞は、本来 it(they)ですが、文学的表現などで擬人化したいときに she や he が使われる場合があります。
例:
- she で受ける名詞:
国、船、車、自然、地球、月、楽器、春 など - he で受ける名詞:
太陽、山、海、川、夏、冬 など
she と he の使い分けについて明確な規則はありません。また、フランス語やドイツ語の男性名詞・女性名詞の区別とも必ずしも一致しませんが、ざっくり共通点を見出すと以下のようなものが考えられます。
例:
- she:温かく包み込むイメージがあるもの、男性目線で「乗りこなす」イメージがあるもの
- he :強い・厳しい・恐ろしいイメージがあるもの
尚、he よりも she の方が使われる頻度としては高いように思われます。また、和訳する場合は、これらの名詞を「彼女」「彼」と訳すのは不自然なので、「それ」と訳すか、名詞を繰り返して訳すのがよいでしょう。
16行目:at first ~ but …
At first gradually, but with ever increasing speed
【和訳】最初は徐々に、しかし絶えず速度を速めながら
at first(最初は)は、最初の状況が後には変わることを示唆する表現で、but や however と呼応します。詳しくは以下の記事を参照してください。
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25行目:that which
there is nothing so expensive as that which comes free
【和訳(直訳)】タダでやってくるものほど高いものはない
that which の that は 漠然と「物事(thing)」を指します。
that which = 関係代名詞 what と考えてください。
28行目:contribute to
The cutting down of forests … contributes to global warming
【和訳】森林の伐採は、地球温暖化の一因となる
contribute to ~ は「~に貢献する」という意味が有名ですが、「~の一因となる」という意味(訳し方)も覚えておくこと。良い結果・悪い結果を問わず使うことができます。
37行目:not only ~ but also …
Not only that, there are countless millions who are ・・・
【和訳】それだけでなく、・・・である何百万とも知れぬ人々もいる
有名な構文 not only ~ but also … にはさまざまな変化形があります。その一つに、but または also の省略(またはその両方の省略)というものがあります。
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ここでは以下の文の also が省略されたものと考えられます。
Not only that, there are (also) countless millions who are ・・・
また、Not only と同じ行にある as well as にも注目しましょう。as well as は also とほぼ同じ意味で、並列・追加を表すディスコースマーカーです。
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つまり、ここは文脈的に「人類の精神的な幸福における大きな穴(gaping holes)」を説明しているくだりであることを踏まえ、それらが以下のように並列されていることを理解してください。
- breakdown of both families and social life
- fast-rising crime rates
- countless millions who are ・・・
45行目:ensure that S + V現在形
ensure not only that we have an environment fit to inhabit, but that everyone on the planet can enjoy the same high quality of life
【和訳(直訳)】我々が住むのに適した環境を保持するだけではなく、地球上の全ての人々が同じ質の高い生活を享受できることを確実にする
ensure ~ の that 節 内の動詞が、現在形の have であることに違和感を感じた人はいないでしょうか?
ensure that ~ は「~を確実にする、~ができるようにする、~が必ず起こるようにする」
などという意味ですが、that 節 の内容はまだ起きていないことですので
so that S may/can/will V(S が V できるように、S が V するために)
の目的構文のように、that 節 内には これらの未来のイメージのある助動詞を入れたくなるかもしれません。
しかし、実は文法的には、ensure that ~ 内には助動詞を入れる必要がないのです。その理由は、私の推測ですが「確実にする」という意味合い的に、that 節 内のことを「事実」と捉えているからなのではないでしょうか。このことは以下の表現にも当てはまります。
- make sure that ~(= ensure)
- make certain that ~(= ensure)
- see (to it) that ~(~になるように注意する)
とは言え、ネイティブでもやはりこれらの that 節 には助動詞が欲しいと思う人もいるようで、can や will が入った文もしばしば見かけます。現に本文でも、二つ目の that 節では can enjoy と助動詞が使われています。本来はこれは、enjoys とすべきなのです。
文法問題にはおそらく出ない、ちょっと細かい話ではありますが、覚えておいて損はありません。
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