比較の重要表現 not so much A as B(AというよりもむしろB)について、「なぜそういう意味になるのか?」「AとBがどっちなのか覚えられない」などという声をよく聞きます。今回は、not so much A as B の成り立ちについて解説します。
not so[as] ― as ~ の訳し方
not so much A as B の構文を理解するには、まずは原級比較の否定の形
not so[as] ― as ~ (~ほど―ない)
の意味や訳し方を理解しておく必要があります。以下の例文で確認しましょう。
He is not so tall as I am.
(彼は私ほど背が高くない)
繰り返しますが、not so ― as ~ の訳し方は「~ほど―ない」です。くれぐれもこの文を「(×)彼は私と同じくらい背が高くない」とは訳してはいけません!この訳では「彼と私の身長がイコールではない(≠)」という意味になり、彼と私どちらの背の方が高いのか分からなくなってしまいます。
この文が言いたいことの本質は、so ― as ~ を取り除いた後に残る
He is not so tall as I am.(彼は背が高くない)
ということ、つまり彼と私を比べたら、「彼は背が高くない方」ということなのです。not so ― as ~ を見たら、前半が否定されているということをよく覚えておいてください。
直訳から考える
では本題の not so much A as B に移ります。以下の例文を見てください。
He is not so much a singer as an actor.
これも、not so[as] ― as ~ (~ほど―ない)の形になっていますね。そこで、これを直訳してみましょう。
「彼は俳優であるほど大いに歌手ではない」
much を「大いに」と訳しています。これは程度の大きさと考えてください。
ちょっと分かりにくい日本語訳ですが、これはつまり、「彼が歌手である」程度と「彼が俳優である」程度の大きさを比べ、
「彼が歌手である」程度の方が大きくない[⇒小さい]
=「彼が俳優である」程度の方が大きい
と言っています。
もしそれでも分かりにくければ、so ― as ~ を取り除いてみてください。残ったものは
He is not so much a singer as an actor.
です。要はこの文は、「彼が歌手である」ことを否定しているのであり、つまり、彼は歌手なのか俳優なのかどっちなのか?と言ったら「彼は俳優」なのです。そこから、
「彼は歌手というよりもむしろ俳優だ」
という意訳が生まれました。前半が否定されているということを落ち着いて考えたら、混乱することはありませんね。また、意訳の「―というよりもむしろ~」は、左から右に(返り読みせず)訳すことができるというメリットがあります。まずは直訳し、いったん理屈を覚えたら、意訳の方で慣れておきましょう。
確認テスト
- 以下の英文を和訳しなさい。
Oceans do not so much divide the world as unite it. - 日本文の内容になるよう、カッコ内の語を並べ替えて英文を作りなさい。
「彼は詩人というよりも学者である」
He ( a poet / as / is / much / a scholar / not so ). - 日本文の内容になるよう、カッコ内の語を並べ替えて英文を作りなさい。
「人の価値は所有物よりもむしろ人物次第です」
A man’s value lies ( as / has / he / in what / much / not / so ) in what he is.