要旨要約問題を「難しい」「苦手」と感じる受験生は多いようで、「どう書いたらよいか?」「上手くなるにはどうしたらよいか?」と質問されることがよくあります。今回は、要約を書くときのコツや気をつけるべきポイントをご紹介します。
尚、要約問題で必要な箇所、または省くべき箇所を見つけるには、ディスコースマーカー(論理マーカー)の知識が必須です。ディスコースマーカーについて詳しくない方は、先に以下の記事にざっと目を通すことをおすすめします。
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また、今回の記事の各項目でも、上記記事の当該ディスコースマーカーへのリンクをつけていますので、必要に応じて参照してください。
絶対に押さえるべき最優先事項
「トピック」「主張」「根拠」を書く!
要約問題で絶対に書かないといけないのが「トピック」「主張」「根拠」の3点です(※ただし「トピック」=「主張」のこともあります)。ほとんどの要約問題では英文内にこれら3点があるので探し出し、制限字数に関わらず必ず何らかの形で盛り込んでください。それだけで、おそらく8割は取ることができるでしょう。
「トピック」「主張」「根拠」は、以下のような場所に現れることが多いので、参考にしてください。
トピックの見つけ方
- 第一パラグラフ(特に第一文)
- 疑問文(例:「人間はなぜ~なのだろうか?」等)
- 強調表現
強調構文;最上級;感嘆文;What is ~ is …;most important;more importantly;specifically;to be more specific;in particular;It is noteworthy that ~;It is worth noting that ~ 等
主張の見つけ方
- 第一パラグラフ(トピック=主張のことがある)
- 逆説ディスコースマーカー(特に It’s true ~ but … 等の「譲歩構文」に注意)
but;however;yet;nevertheless;still;conversely;instead;rather 等
(詳しくはこちらの記事を参照) - 結論ディスコースマーカー
in conclusion;to summarize;in short;(all) in all;eventually;in a word;
in any event;in closing;in the end;in the long run;it follows that ~;overall;taken togethe;above all 等
(詳しくはこちらの記事を参照) - 義務・判断の表現
must;have to;should;need;be required to;be bound to 等 - 強調表現(前項:トピックの見つけ方を参照)
根拠の見つけ方
- 原因ディスコースマーカー
because;as;since;for;due to;on account of;The reason is that;after all;seeing that 等 - 結果ディスコースマーカー(※前にあるものが根拠)
so;therefore;hence;consequently;accordingly;as a result;as a consequence;This is why ~;so that;This indicates that 等 - 因果関係を表す動詞(※前にあるものが根拠)
cause;result in;bring about;lead to;contribute to 等
詳しくはこちらの記事を参照
「具体例」は書かない!
要約の鉄則として、具体例は書いてはいけないということを覚えておいてください。
具体例を書いたから即減点されるということではないのですが、具体例を書いてしまうとおそらく必須項目を書く余裕がなくなり、結果的には減点につながります。
たまに1段落がまるまる具体例ということもありますが、その場合、その段落はごっそりカットです。
以下のような「例示」を表すディスコースマーカーを見つけたら、その例示の内容自体は書かずに、その前(場合によっては後)に記述されている一般化されたこと(抽象的なこと)を書くようにしてください。
- 主な例示ディスコースマーカー
for example;e.g.;for instance;(let’s) suppose;(let’s) say;including;such as;ike;take ~ as an example[illustration];in illustration of;needless to say;This is seen in;数字;固有名詞 等
(詳しくはこちらの記事を参照)
得点アップのためのコツ
ここまで述べたことを踏まえた上で、さらなる得点アップにつながるおすすめポイントをご紹介します。字数制限や英文の構成によっては実践できないこともあるかもしれませんが、可能な場合は是非実践してください。
段落構成は基本的に踏襲
英語の文章は、原則として1つの段落につき1つのテーマが書かれています。文章の長さや制限字数にもよりますが、複数段落で構成された文章の場合、基本方針として段落構成はそのまま生かすことをお勧めします。予め方針を決めておくことで、構成を考える手間が省け、時間の節約になるでしょう。
例えば「①トピック⇒②根拠A⇒③根拠B⇒④主張」という4段落構成の場合、それぞれの段落からポイントを1つずつピックアップして「トピック⇒根拠A⇒根拠B⇒主張」という形でまとめるイメージです。これをわざわざ「トピック⇒結論⇒根拠A⇒根拠B」などと展開を変える必要はありません。それで即減点ということではありませんが、きっと考える時間が余計にかかりますし、おそらく採点者にとって読みにくい要約になります。
ただし、既に述べたように、1段落がまるまる具体例になっている文章の場合は、その段落はカットしてください。
並列を明らかにする
並列されている事柄はたいてい重要ですので、基本的には盛り込むようにしてください(※ただし、すでに述べたように「具体例」の並列なら書く必要はありません。重要なのは「根拠」の並列です)。
First, ~. Second, …. など分かりやすく「列挙」されている場合はよいのですが、注意しなければいけないのは、also や another など「追加」のディスコースマーカーです。これらが用いられる場合、それを見て初めて並列に気付くということもあります。その場合、一度立ち止まって何と何が並列されているのか頭を整理し、並列の1つ目を見逃さないようにしてください。
- 主な追加・並列ディスコースマーカー
also;moreover;in addition;besides;as well as;another ~;not only A but also B;more importantly;at the same time;First, ~. Second, …;to begin with;next;finally;similarly;equally;likewise 等
(詳しくはこちらの記事を参照)
対比を明らかにする
英語の論説文は、多くの場合 A ⇔ B という対比によって論理展開されます。制限字数にもよりますが、基本的には A, B 両サイドを盛り込むべきと考えておいてください。A と B の対比関係を正確に捉え、その違いを分かりやすく説明します。
例えば、not A but B という表現を見つけたら、重点(筆者の主張)は B にありますが、それと反対のことが述べられている A も無視せずに記述してください。ただし、明らかに A を書く余裕がないほど制限字数が厳しい場合はもちろん B が優先です。
- 主な対比ディスコースマーカー
while;meanwhile;wheras;some ~, others …;one ~ another …;the former ~ the latter …;on the other hand;not A but B;not A, instead, B;not A, rather, B;not A, on the contrary, B 等
(詳しくはこちらの記事を参照)
言い換えは抽象度の高いもの優先
英語の論説文では、A = A’ = A” のようにさまざまな形で言い換えが用いられます。基本的に言い換えられることは重要なので、要約には盛り込むべきと考えてください。
しかし、言い換えられている全てを書く余裕はないはずなので、その中からいずれかを選ぶ必要があります。基本的には「抽象度の高いもの」優先と考えてください。英語の文章は「抽象⇒具体」の形で論理展開されるので、例えば A = A’ = A” の場合、最初に出てきた A が抽象度は高いことが多いでしょう。
ただし、もし「語彙や構造が難しい」「抽象的すぎる」等の問題があれば、具体化された方を選んだり、ミックスさせたり等、臨機応変に対応してOKです。いずれにしても「つまり」や「言い換えると」などとは書かないようにしてください。
最後に
トピック・主張・根拠が見つからない場合
「トピック」「主張」「根拠」は要約の必須項目だと述べましたが、実際にはさまざまな理由で、これらを特定するのが難しいこともあるかと思います。ありがちなのは、ディスコースマーカーが明確でない場合や、「トピック=主張」であるとか「根拠がない」などイレギュラーな構成の文章である場合です。
そんな場合でも、「トピック」「主張」「根拠」は「どこだろう?」「どこかにあるはず」と考えて読むことが大切です。考えることによって見つかることは多いですし、明確に特定できずとも、考える過程で自ずと対比・例示・因果関係など文章の構成に注意が向き、大外ししない論理的な要約を書くことにつながります。どんな場合でも、決して漫然と単語を拾った場当たり的な要約を書いてはいけません。
数をこなすべし
要約の上達には、ある程度の数をこなす必要があります。逆に言うと、数をこなせば劇的に上達するのが要約です。自分が受ける学校の過去問はもちろん、余裕があれば適当な問題集にどんどんチャレンジしてください。可能な場合は、身近な先生に添削をお願いするとよいでしょう。自分で答え合わせする場合は、当記事の内容が実践できているか?模範解答がそのようになっているか?を確認してください。
得意な人は少ない
そもそも要約問題が得意な受験生は多くありません。一説には、要約問題の受験生全体の平均点は3割前後とも言われています。そんな中、6割取れれば大変なアドバンテージで、もし8割取れれば合格と言ってもよいくらいです。当記事に書いてあることを実践できれば8割は十分可能です。是非自信を持って臨んでください!