「ディスコースマーカー(discourse marker)」とは、文字通りの訳としては「談話標識」です。広義には、話し言葉で使う「相槌」や「つなぎ言葉」(a-ha, well, you know…)等を含みますが、狭義には「書き言葉において論理展開を示す目印」を指し、特に受験英語の世界ではこの使い方が一般的です。または「論理マーカー」と呼ばれることもあり、この表現の方が分かりやすいかもしれません。当サイトでも、ディスコースマーカーとはこの狭義のディスコースマーカーを指すものとします。
ここでは、ディスコースマーカーの一覧をご紹介します。おそらく「これもディスコースマーカーなのか!」と意外に思う発見があるはずです。尚、どんな言葉がディスコースマーカーに該当するのかついて明確な定義はありません。比較的一般的とされているものについては大方盛り込みましたが、これが全てというわけではありません。一方で、あまり一般的ではなくても私独自の判断で加えたものもあります。
カテゴリーは、大きく「A⇔B」「A=B」「A+B」「A→B / A←B」の4種類に分け、適宜それ以下の区分を設けました。ただし、これらのカテゴリー分けについても明確な基準はないため、中には異論がある区分もあるかもしれません。細かい区分についてはあまり深く考えず、参考程度に理解してください。大事なことは「大きな流れを見逃さず、論旨を掴む」ということと「日頃からディスコースマーカーへの意識を高め、論理的な読解を心がける」ということです。
尚、ディスコースマーカー一覧のPDFファイルが必要な方は、ページ下部にダウンロードのリンクを用意しています。
目次
「対比・逆接」系ディスコースマーカー(A⇔B)
最も重要なディスコースマーカーです。A⇔B という対立するつながりがあり、原則として文意(プラス・マイナス)が逆転します。また、A と B では B の方に重点があり、筆者の主張を際立たせるために用いられます。
逆接 のディスコースマーカー
- but(しかし)
- however(しかし)
- yet(しかし、それにもかかわらず)
- nevertheless(それにもかかわらず)
- still(それでもやはり)
- conversely(その反対に)
- instead(それどころか、そうではなく)
- rather(それどころか、そうではなく)
譲歩 のディスコースマーカー
この節・句の中にある内容は筆者の主張ではないということに留意すること。
- though [although](~だが)
- even though(~だが、~だとしても)
- even if(~だとしても)
- while(~だが)
- as(~だが)※形/副 + as + SV の倒置構文で
- whether(~であろうとなかろうと)
- 疑問詞 + -ever = no matter + 疑問詞(どんなに~でも)
- in spite of~ = despite ~(~だが)
- with all~ = for all ~(~だが)
- regardless of~(~にもかかわらず)
- even ~(~でも、さえ)
対比 のディスコースマーカー
基本的には「A⇔B」ですが、「逆接」ほど A と B のコントラストが強くないので、文脈によっては「並列(A+B)」に近くなる場合もあります。
- while / whereas(一方で)
- some ~ others …(あるものは~他のものは…)
- one ~ another …(一方は/もう一つは)
- one ~ the other …(一方は/他方は)
- the former ~ the latter …(前者は~後者は…)
- on the other hand(他方)
- meanwhile(一方で)
- ;(セミコロン)(一方で)
- on the contrary(その反対に)
- unlike ~(~とは違って)
- at the same time(それと同時に、その一方で)
- A, in[by] contrast, B = in contrast to[with] A, B(A に対して B)
- (as) compared to(~と比べると)
- not A but B(A ではなく B)
- not A, instead, B = instead of A, B(A ではなく B)
- not A, rather, B = rather than A, B(A ではなく B)
- not A, on the contrary, B(A ではない。それどころかむしろ B)
- It is B that ~(※強調構文)(~するのは B だ)※「A ではなく」という含みがある。前の文が否定文(not A)であることも多い
- What ~ is B(※一種の強調構文)(~するのは B だ)※「A ではなく」という含みがある
譲歩構文(譲歩⇔主張)
相関的に用いられる一種の構文です。これらの表現の出だしを見かけたら、but などの逆接が来ることを予想して読み進めてください。また、but 以降が筆者の主張であることを意識してください。
- It is true (that) ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Truly ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- To be sure ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Certainly ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Indeed ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- Of course ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- No doubt ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- S may[might] V, but …(~かもしれない、しかし…)
- It seems (that) ~, but …(~のように見える、しかし…)
- Yes (that) ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- S do V(※強調の do), but …(たしかに~する、しかし…)
- I am not saying ~ , but …(~と言っているわけではない、しかし…)
- This is not to say ~ , but …(~と言っているわけではない、しかし…)
- not always ~, but …(いつも~とは限らない、しかし…)
- generally ~, but …(一般には~、しかし…)
- commonly ~, but …(一般には~、しかし…)
- on the whole ~, but …(概して~、しかし…)
- in many cases ~, but …(多くの場合、しかし…)
- in most cases ~, but …(たいていの場合~、しかし…)
- typically ~, but …(典型的には~、しかし…)
- usually / often / sometimes ~, but …(たいてい/しばしば/時々~、しかし…)
- in theory ~, but …(理論的には~、しかし…)
- at first ~, but …(最初は~、しかし…)
- Initially ~, but …(最初は~、しかし…)
- at first glance ~, but …(一見したところ~、しかし…)
「具体化」系ディスコースマーカー(A=B)
英文の論理展開の基本は「抽象⇒具体」で、これを表現するために用いられるのが「例示」や「言い換え」です。大事なことは「A(抽象)= B(具体)」だということで、A をしっかり理解できたら、B は飛ばし読みできますし、逆に A を理解できなかったら、B をしっかり読んで A の内容を類推する必要があります。
言い換え のディスコースマーカー
- in other words(言い換えれば)
- that is (to say)(すなわち)
- :(コロン)(すなわち)
- ―(ダッシュ)(すなわち)
- or / i.e. / namely(すなわち)
- in short / in brief / in a word(要するに)
- strictly / more strictly / strictly speaking(厳密に言えば)
- specifically(具体的に言うと、はっきり言うと)
- It means (that)~(それは~を意味する)
- in fact(もっとはっきり言えば、それどころかむしろ)
- indeed(もっとはっきり言えば、それどころかむしろ)
- on the contrary(それどころかむしろ)
例示 のディスコースマーカー
- for example(例えば)
- e.g.(例えば)
- for instance(例えば)
- (let's) suppose(仮に~だとしよう、例えば)
- (let's) say(言ってみれば、例えば)
- including ~(~を含めて、~など)
- such as ~(~のような、~といった)
- like ~(~のような、~といった)
- :(コロン)(~のような、~といった)
- take ~ as an example[illustration](例として~を取り上げる)
- in illustration of ~ ~(~の例証として)
- needless to say ~(~は言うまでもななく)
- not to mention ~(~は言うまでもななく)
- to say nothing of ~(~は言うまでもななく)
- let alone ~(~は言うまでもななく)
- in particular ~(特に~、とりわけ~)
- especially ~(特に~、とりわけ~)
- even ~(~でさえ)※極端な例を表す
- This is seen in ~ ~(これは~の中に見られる)
- 数字
- 固有名詞
「追加・並列」系ディスコースマーカー(A+B)
ある事柄について新しい情報を追加し「A+B」のつながりがあるのがこれらです。追加されるものはさまざまですが、多くは「具体例」や「理由」を追加するために使われます。尚、A と B でプラス・マイナスのイメージは変わりません。また、これらのディスコースマーカーを見たら、何と何が並列されているかを頭の中で整理しながら読み進める必要があります。
追加 のディスコースマーカー
- and(~と)
- also / too(~もまた)
- moreover / furthermore / what is more(さらに、加えて)
- besides (~)(加えて、~に加えて)
- additionally(さらに、加えて)
- further(さらに、加えて)
- another ~(もう一つの~)
- ;(セミコロン)(また)
- on the top of ~(~に加えて)
- A, in addition, B = in addition to A, B(A に加えて B)
- B as well as A = A, B as well(A 同様 B も)
- not only [simply, just, merely] A but also B(A だけでなく B も)
- not A alone but also B(A だけでなく B も)
- more importantly(さらに重要なことに)
- equally important(同様に重要だ)
- not to mention ~(~は言うまでもなく)
- even ~(~さえ)※極端な例を示す
- at the same time(それに加えて)
- additional ~(もう一つの~)
列挙 のディスコースマーカー
- first / firstly / first of all / in the first place(第1に)
- first of all(まず第一に)
- to begin with / to start with(まず初めに)
- second / secondly / in the second place(第2に)
- next / then(次に)
- last/ lastly / finally(最後に)
- last but not least(最後に大事なことですが)
- some ~ others …(あるものは~他は…)
- one ~ another …(あるものは~もう一つは…)
- one ~ the other(s) …(あるものは~残りは… )
類似 のディスコースマーカー
- like ~(~のように)
- just like ~ / just as ~(ちょうど~のように)
- similarly(同様に)
- equally(同様に)
- likewise(同様に)
- in the same way(同様に)
- parallel to(~と平行して、~と同様に)
「因果関係」系ディスコースマーカー(A→B / A←B)
英語の論説文は論理的に構成されていますので、因果関係が重要です。A と B のどちらが原因でどちらが結果なのかに注意してください。尚、A と B でプラス・マイナスのイメージは変わりません。
原因・根拠 のディスコースマーカー
- because / as / since(~だから)
- now (that)(今や~なので)
- for(…というのは~だからだ)
- after all(なにしろ~なのだから)
- because of / due to / on account of / owing to(~だから)
- The reason (why …) is that ~(理由は~)
- This is because SV(これは~だからだ)※this が結果、SVが原因
- as a result of A, B(A の結果として B)※A が原因、B が結果
- This is evidenced by ~(これは~を根拠にしている)
- seeing that ~(~であるからには、~なので)
結果 のディスコースマーカー
- so / therefore / thus / hence(よって、だから)
- consequently / accordingly(その結果)
- as a result / as a consequence / in consequence(その結果)
- This is why SV(だから~)※this が原因、SVが結果
- ~ so that …(~である。その結果…)
- so ~ that …(非常に~なので…)
- such ~ that …(非常に~なので…)
- This indicates that ~(これは~を示している)
因果関係を表す動詞
※ A が「原因」、B が「結果」
- A cause B = B be caused by A
(A が B を引き起こす = B は A によって引き起こされる) - A result in B = B be resulted from A
(A の結果 B になる = B は A から生じる) - A bring about B(A が B をもたらす)
- A lead to B(A が B につがなる)
- A contribute to B(A は B の原因である)
結論 のディスコースマーカー
- in conclusion = as a conclusion = To conclude(結論として、要するに)
- to summarize = to sum up = in summary(結論として、要するに)
- in short / in brief / in a word(要するに)
- (all) in all(全体として見れば)
- eventually = ultimately(結局は、最後には)
- in a word(要するに)
- in any event(ともかく)
- in closing(締めくくりに)
- in the end(最後には、結局)
- in the long run(長い目で見れば、結局は)
- it follow that ~(~という結果になる)
- overall(全体的に見て)
- taken together(総合すれば)
- above all(何をおいても、とりわけ)