基本単語の一つである indeed。「実に」「本当に」などという訳で覚えている人が多いと思いますが、実はそのような単純な訳語だけで片づけるわけにはいかない、奥の深いクセモノの単語です。ここでは、indeed の意味や使い方について、詳しく掘り下げて説明します。
indeed について、ジーニアス英和辞典第3版を見てみると、以下のような記述があります。
- [確認・同意して; be動詞・助動詞の後や短い受け答えで] 本当に、確かに
- [強調][通例文末で] 実に、まったく《「very+形容詞(+名詞)・副詞 ~」で用いられ、very の意味を強める》
- [しばしば文頭で]〈外見上と違って〉実は;[前言を確認・補足して] 実際は、はっきり言うと《in reality, in fact, in truthが普通》
- [通例butを伴って譲歩的に] なるほど、確かに
これらのうち、1 と 2 は、どちらかと言えば会話でよく使われる表現で、大学入試の長文ではあまりお目にかかりません。もし出てきても、「実に」「本当に」などと訳しておけばだいたい事足りるので、おそらく問題はないでしょう。問題なのは 3 と 4 です。この2つは「実に」や「本当に」では全く意味が通らず、しかも大学入試の長文で頻出で、使い方には十分注意が必要です。
indeed の重要な意味1「なるほど、確かに」(譲歩構文)
まずジーニアスの 4 の意味をご紹介します。
- [通例butを伴って譲歩的に] なるほど、確かに
これは、いったんある意見を認めつつ(譲歩)、その後でその意見をひっくり返して自分の主張を述べるために使われるものです。以下が例文です。
- Indeed he is old, but he is still healthy.
(確かに彼は歳をとっているが、今もなお健康だ) - He may indeed not be clever, but he is certainly honest.
(なるほど、彼は利口ではないかもしれないが、確かに正直だ)
この使い方の indeed は、文頭で使われることが多いですが、後者の例文のように、文中で使われることもあります。
大事なことは、この使い方の indeed は、but や however などの逆接を表す接続詞(接続副詞)とセットで使われるということです。また、but 以下が筆者の主張であるということに注意してください。このように「譲歩⇒逆接」がセットになった一連の文のことを、「譲歩構文」と呼びます。
譲歩構文は、indeed ~ but … の他にも、以下のようなものがあります。これらを見たら、「あ、譲歩構文だ!」とすぐ気が付くよう、アンテナを張っておいてください。
- It is true (that) ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Truly ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- To be sure ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Certainly ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Indeed ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- Of course ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- No doubt ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- S may[might] V, but …(~かもしれない、しかし…)
- It seems (that) ~, but …(~のように見える、しかし…)
譲歩構文は、英文の読解において非常に重要です。なぜなら、話の展開を予測できるからです。例えば、It is true that ~ など譲歩の書き出しを見たら、「きっとこの後に but が来るぞ」と予測しながら読むことができます。しんどい長文読解で、先を予測できれば、読むのがぐんと楽になりますよね。
また、既に述べたように、譲歩構文では、筆者の主張は but 以下にあります。つまり、譲歩の中身はさほど大事なことではないので、流し読みして構いません。多少分からない単語や表現があっても悩む必要はないのです。
このように、譲歩構文を意識しておくことによって、読むことが楽になるだけでなく、要点を速く正確につかむことができます。
また、この譲歩構文の知識が、設問として問われるケースもあります。以下は、甲南大学で出題された長文問題の一節と、その設問です。
- Indeed: we have more food, more clothes, more cars, more holidays and, above all, better health. Yet we are not happier. Despite all the efforts of governments, teachers and doctors which have improved our lives, human happiness has not increased.
確かに、今の私たちはより多くの食料、衣服、車、休日、そしてとりわけより良い健康がある。しかし、私たちより幸せなってはいない。私たちの生活を改善してきた政府、教師、医者のあらゆる努力にもかかわらず、人間の幸せは増加していないのだ。問. 下線部の意味として最も近いものを選択肢から選び、その記号を書きなさい。
A. By the way B. Hardly C. It’s true D. Of course not
(正解:C)
indeed の重要な意味2「(もっと)はっきり言えば」(具体化)
それ以上に大事で、且つあまり知られていないのが、ジーニアスの 3 の意味です。
- [しばしば文頭で]〈外見上と違って〉実は;[前言を確認・補足して] 実際は、はっきり言うと《in reality, in fact, in truthが普通》
記載されている通り、この用法の indeed は基本的に文頭で使われます。いろいろなことが書いてありますが、この中で一番覚えておいてほしいのは、「はっきり言うと」という訳です。尚、私は「もっと」を補った「もっとはっきり言うと」という訳をオススメしています。また、ジーニアスには記載されていませんが、他の辞書では「それどころか」という訳も載っており、この訳もオススメです。
この用法についての説明として、ジーニアスには「前言を確認・補足して」とあります。これも正しい説明ではあるのですが、これについては、思い切って「具体化」と考えたほうがより分かりやすいです。indeed の前には、多くの場合、ちょっと奥歯に物が挟まったような抽象的な表現があります。それを、より事実をぶっちゃけた具体的な表現に言い換えているのです。「具体化」とは「もっとはっきり言うこと」ですよね。
尚、「実は」や「実際は」という訳も紹介されていますが、この訳は使えないことが多く、オススメしません。「実際は」という日本語は、「見かけや理論上とは違って実際は」という文脈で使われる言葉ですが、indeed がこの使い方をされることはあまりありません。どちらかと言えば(これもあまりオススメはしませんが)、「実際」ならそこそこ使えることはあります(このことについては後述します)。
それでは入試問題の例をみてみましょう。以下は立教大学の入試問題の一節です。
- The fact that we possess a mathematical intuition implies that our evolutionary ancestors had it too. Indeed, recent research indicates that our ancestors possessed such an intuition long before they could walk upright.
我々人間が数学的直観を持っているという事実は、我々の進化上の祖先がもまたそれを持っていたということを示唆している。もっとはっきり言えば(それどころか)、最近の研究では、我々の祖先は、直立歩行ができるようになるずっと前から、数学的直観を持っていたことが示されている。
indeed の前では、「人間の祖先が数学的直観を持っていたことを imply している」という説が述べられていますが、imply とは「暗示的に示す」という意味であり、またその根拠も明らかになっていません。それが、後半では「最近の研究」という、説の根拠が示され、動詞も「明示的に示す」という意味の indicate が使われています。しかもその説は「~ずっと前から…」ということで、説がより具体化されているのが分かるのでしょう。なので「もっとはっきり言えば」なのです。もう一つの訳「それどころか」もよいです。この場合、「『なんとなくそうだろう』どころではなくて、はっきりと証明されているのだ」と、前後の対照性が際立ちます。いずれも前後のつながりが明確になる訳です。
ここで「もっとはっきり言えば(それどころか)」を、「実は」や「実際は」という訳に置き換えてみてください。おかしいのが分かるはずです。「実際」であれば、ここでは、前後のつながりはぼやけるものの、通じないことはありません。ただし、「実際」と訳す場合でも、それが具体化の目印(ディスコースマーカー)であることはしっかり意識しておいてください。英語の論説文は、原則として「抽象⇒具体」の繰り返しで論理が展開されていきます。連続する2つの文のつながりが「具体化」であることを意識できるか否かは、読解の精度の差となって現れるでしょう。その点、「もっとはっきり言えば」という訳は、具体化であるということを意識しやすいです。
以下は学習院大学の入試問題の一節です。
- Our familiarity with the Earth keeps us from appreciating how unique our planet is. The fact is, in all of our solar system, there is no planet like it ― indeed, in all the known universe the Earth stands alone. And of all its singular characteristics, perhaps the most important is its inhabitants.
人間は地球になじんでいるが故に、地球がいかに独特な惑星なのかということを理解できないでいる。実のところ、太陽系の全ての惑星の中で、地球のような惑星は存在しない。もっとはっきり言えば(それどころか)、既知の宇宙において、地球は唯一無二の存在である。そして、その特異な特性の中で、最も重要なのは、地球に住むものなのである。
前半では、「太陽系の中で地球のような惑星は存在しない」と述べられていますが、後半では「(太陽系どころか)宇宙全体で見ても、地球は唯一無二の独特な存在である」と、より具体的な見解が述べられています。ここでは「実際」という訳は、前後のつながりがピンときません。ここでは「もっとはっきり言えば(それどころか)」のほうがはるかに良いことが分かるでしょう。
また、この indeed の用法が設問として問われることもあります。以下は立命館大学の入試問題です。
- Einstein’s next idea was one of the greatest that anyone has ever had ― ( ), the very greatest, according to Boorse, Motz, and Weaver in their thoughtful history of atomic science.
アインシュタインが次に考えたアイディアは、全ての人間がこれまでに考えたアイディアの中で最も偉大なものの一つである。もっとはっきり言えば(それどころか)、ボアーズ、モッツ、ウィーバー曰く、まさに最も偉大なものである。問. 本文の( )内にに入れるのにもっとも適当なものを選びなさい。
(1) for example (2) in addition (3) indeed (4) nevertheless (5) still
(正解:(3) )
前半で「~アイディアは、全ての人間がこれまでに考えた(複数の)アイディアの中で最も偉大なものの一つである」と述べられています。これを言い直すように、後半では「(複数の中の一つどころか)まさに最も偉大なものである」と述べられています。オブラートにくるんだ物言いをよりはっきりさせた、具体的な言い換えです。indeed の用法をしっかり理解していないと正解できない問題と言えます。
indeed = in fact
尚、この用法の indeed(もっとはっきり言えば)は in fact とほぼ同じです。in fact も indeed と同様、「実際」という訳では前後のつながりがピンと来ないので注意してください。
この用法の indeed について、ジーニアスには、《in reality, in fact, in truthが普通》とありますが、決してそんなことがありません。文章においては、indeed と in fact は同じくらいの頻度で現れます。
違いを挙げるとすれば、in fact は「(見かけと違って)実際は」という「前言の訂正」で使われることもそれなりに多いですが、既に述べたように、indeed はこの意味で使われることあまりありません。また、in fact には、but とセットで使う譲歩構文の用法はありません。in fact について詳しくは以下の記事を参照してください。
【関連記事】in fact の本当の意味・使い方・例文
まとめ
indeed には「実に」「本当に」という意味もありますが、大学入試に頻出の重要な意味として、以下の2つの意味・用法をしっかり区別して覚えておいてください。
- [譲歩構文として]なるほど、確かに[= it’s true, of course 等]
- [具体化]もっとはっきり言えば、それどころか
いずれもディスコースマーカー(論理マーカー)です。特に「具体化」の意味の方はあまり知られていないので十分注意してください。これらを意識することで、今までよりも精度が高く、深い読解ができるようになるはずです。
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