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基礎英語長文問題精講

基礎英語長文問題精講 問題37 解説

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名著ですが解説が少ないという評判の「基礎英語長文問題精講」の解説を補足しています。本書の解説と別冊の解答・解説をよく読んだ上で、疑問点がある方は是非参考にしてください。

本文

3行目:as with ~

As with other habits(,) it is not to be expected that they should be perfectly consistent.
【和訳】他の習慣と同様に、それら[=意思伝達を目的とする人間の習慣=言語]が完全に首尾一貫していることは予想されるべきではない

as with ~ は「~同様に」という意味。as is the case with ~ とほぼ同義で、短縮された表現と考えてもよいかもしれません。また、この with は「関連~について)」を表します。

ここからはちょっと細かい話になりますが、as is the case with ~as は接続詞(様態)ではなく関係代名詞です。よって、as with ~ の as も関係代名詞と考えられます。

なぜこんなことにこだわっているかというと、この文が否定文だからです。様態の as と 関係代名詞の as (with) では、否定文の場合の解釈が違ってきます。以下の例を見てください。

  1. Mary didn't work hard as Tom did.
    (トムとは違って、メアリーは一生懸命働かなかった)※トムは一生懸命働いた
  2. As with Tom, Mary didn't work hard.
    (トム同様に、メアリーは一生懸命働かなかった)※トムは一生懸命働かなかった

まず 1 の例について、否定文のときの様態の as を「~ように」と訳さないようにしてください。肯定なのか否定なのかが分からなくなってしまうからです。「~ように」だったら間違いではありませんが、もっと思い切って「~と違って」と訳したほうが、文意は明らかになります。

一方 2 の例では、前に述べたように as は関係代名詞で、as with the case with ~ と同義です。ということは、さらに以下のように言い換えることもできます。

  • = Mary didn't work hard, which is the case with Tom.

as よりも which のほうが、関係代名詞であることが分かりやすいでしょう。which の先行詞は Mary didn't work hard です。また、このような case は「場合」ではなく「事実、実情」という意味であることに注意してください(be the case = be true)。つまり、そのことがトムについても実情である(当てはまる)と言っているので、つまり「トムも一生懸命働かなかった」のです。

というわけで本文の話に戻ると、
As with other habits it is not to be expected that they should be perfectly consistent.
という文は、
他の習慣も完全に首尾一貫していることは予想されるべきではない
ということを意味しています。

8行目-:内容把握

【和訳】The divergencies would certainly be greater if it were not for the fact that the chief purpose of language is to make oneself understood by other members of the same community
もし言語の主な目的が、同じ社会の他の人々に自分の言うことを理解させることである、という事実がなければ、このようなさまざまな不一致はきっとさらに大きなものになるだろう。

普通に訳すことができた人も、内容的にしっかり理解できているか確認してください。この文は仮定法で、仮定法とは事実に反することを妄想する表現です。よって、この文は「事実は、他人に自分を理解してもらうという目的があるから、言語の差異はそんなに大きなものになっていない」ということを意味しています。難解な文章の場合特に、仮定法の裏の意味を考えると理解の助けになります。

13行目-:内容把握

The closer and more intimate the social life of a community is, the greater will be the concordance in speech between its members.
【和訳】共同体の社会生活が密接であり親密であればあるほど、その共同体の構成員の間の言葉の一致は大きなものになるだろう。

これも、訳すことはできても、何を言いたいのかが分かりにくい文です。「構成員の間の言葉の一致が大きい」は、「方言の差異が少ない」ということの言い換えと考えられますが、引っかかるのは 「密接で親密な共同体」とは何か?ということです。これを、この後で述べられる「人口の動きが少ない社会」と考えてしまうと、そのような社会は「方言の差異が大きかった」と述べられているので、辻褄が合いません。

ここからは私の推測も入りますが、私は「密接で親密な共同体」とは「中央集権制度が早く整った社会(国家)」と考えています。その有名な例がフランスですが、一般的な傾向として、中央集権制度が早く整った国家では方言の差異が早く失われ、その逆に日本やドイツなど、封建領主制(地方分権)が発達していた国では、方言の差異が大きいと言われています。本文に照らし合わせると、中央集権国家では『中央⇔地方』の移動や交流が多く、つながりが緊密だった、ということなのでしょう。異論がある方は是非お知らせください。

24行目:facility

the enormously increased facilities of communication
【和訳】著しく増加したコミュニケーションの手段[便]

facility は意外と訳し方が難しい単語の一つですが、語源を考えると意味を理解しやすくなります。この単語の語源はラテン語ですが、今でもフランス語facil という形容詞があり、これはちょうど英語の easy に当たります。つまり、facility とは一言で言うと「何かを容易にするもの」あるいは「容易さ」なのです。実際、本文でも16行目に easy が使われており、ちょうど言い換えになっています。

例えば sports facilityスポーツ施設)とは、スポーツをすることを容易にする設備や場所のことですよね。また、with facility のときの意味は「容易さ」で、これは with easy と同じ意味。言い換えると easily容易に)です。また、facilitate という動詞がありますが、これは「何かをすることを容易にする」という意味で、そこから「促進する、手助けする」などという訳語が生まれました。

本書では「コミュニケーションの手段」と訳していますが、これは「コミュニケーションを容易にする設備」ということからの意訳と思われます。あるいは「便(べん)」と訳してもよいでしょう。「容易さ」と訳しても意味は通じますが、「容易さ」の意味の場合は不可算(facility)であるはずなので、和訳問題であれば避けるべきです。ただし、理解の上ではそれでも差し支えありません。

設問

問7:former か latter か?

なかなか難しい問題です。要は「より移動が多く、他の国の人と交流する」のは「教養のない人」なのか「教養のある人」なのか?という問題です。

ここで「あちこち移動する季節労働者」のような人を想像してしまうと、「教養のない人(=former)」と考えてしまうかもしれません。しかし、移動やコミュニケーションの手段が発達しておらず困難だった時代の話ですので、それが可能だったのは、一部の特権階級、つまり、どちらかと言えば「教養のある人(=latter)」だったと考えるべきでしょう。今で言うと、海外を飛び回るエリートサラリーマンが、世界中の人々とシンプルな英語でやりとりする、ということを考えると分かりやすいかもしれません。

また、23行目以降でも、「近年はコミュニケーションが容易になり、階級的方言や地域的方言への細分化がなくなってきた」と述べられています。つまり、コミュニケーションが容易でなかった昔は階級的方言があったということでもあり、間接的なヒントとなるでしょう。例えるなら、今は幼稚園児でもスマホでインターネットをしますが、一昔前はインターネット(パソコン通信)をすることができたのは、ごく少数の専門知識を持った、経済的にも豊かな人だけだった、ということもその一つと言えるかもしれません。


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管理人

都内の某予備校で講師をしています。受験生の役に立つ情報をどんどん提供していきたいと考えていますので、「この文法が分からない」「こんなまとめが欲しい」など、ご意見・ご要望・ご質問等がありましたら、コメントを通じてお気軽にご連絡下さい。

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