名著ですが解説が少ないという評判の「基礎英語長文問題精講」の解説を補足しています。本書の解説と別冊の解答・解説をよく読んだ上で、疑問点がある方は是非参考にしてください。
本文
1行目-:代名詞 that
The most important effect <of ~ on …> has been that <involving public policy>.
【和訳】(~の…に対する)最も大きな影響は公共政策に関わるもの[影響]だった。
本書の解説にもある通り、この that は代名詞で、the effect を指しています。そして、その後ろにある involving public policy は that を修飾している形容詞句です。そう言われればなるほどとは思うでしょうが、一読したときに「この that は何だろう?」一瞬悩んだ人もいたのではないでしょうか?
そこで、一つ覚えておいてほしいことがあります。代名詞の that と、その複数形の those は、さまざまな形の形容詞句・節によって後置修飾されることがあるということです。
- The population of China is larger than that <of Japan>.【前置詞句による修飾】
(中国の人口は日本の人口より多い)※ that = population - We should pursue that <which is right>.【関係詞節による修飾】
(我々は正しいことを追い求めるべきだ)※ that = the thing - Salaries are higher here than those <in his country>.【前置詞句による修飾】
(ここでの給料は、彼の母国での給料よりも高い)※ those = salaries - I want to help those <who are in trouble>.【関係詞節による修飾】
(私は困っている人を助けたい)※ those = people - Changes have taken place in many areas of national life, especially in those <related to housing and employment>. 【分詞による修飾】
(国民生活の多くの分野、特に住宅と雇用に関する分野で変化が起こっている)※ those = the areas
こういった後置修飾が普通にあるということを知っておくだけで、英文解釈が楽になる場面は多々あると思います。
ちなみに、that/those は後置修飾のみが可能ですが、代名詞の one/ones は前置修飾も後置修飾も可能です。また、it は前置修飾も後置修飾もできません。これは文法問題で役立つ知識です。
- 〇 a red one
- 〇 the one <of Japan>
- × red that
- 〇 that <of Japan>
- × red it
- × it <of Japan>
16行目-:as we know it(as の用法)
In advanced industrial nations, at least, poverty <as we know it> can be ended.
【和訳】少なくとも進んだ工業国では、我々が知るような貧困は終わらせることができる。
as の用法については本書でも解説がありますが、補足と私なりの見解を述べておきたいと思います。この as は品詞としては接続詞なのですが、as が導く節(as we know it)が直前の名詞(poverty)を修飾しているように見えます。関係詞節でもないのに不思議な感じがしますが、この節は形容詞節(名詞限定)として働いている、非常に特殊な用法の as です。
本書では、as に関して以下の二つの例文が紹介されています。
- Pollution, (as you know), is threatening us. 【関係代名詞?】【接続詞(様態)?】
(ご存知のように、汚染はわれわれを脅かしている) - Pollution <as you know it> is threatening us.【接続詞(様態)?】 接続詞(名詞限定)?】
(あなたがたが知っているような汚染は、当時存在しなかった)
著者の中原先生は、上の b の as(本文と同じ用法)を「状態・様態」としていますが、この as は「名詞限定の節を導く as」として解釈されるのが一般的です。ただし、もしかしたら中原先生はこれを、状態・様態の as が導く副詞節が文中に挿入されていると考え、名詞にかかるように意訳しているだけなのかもしれません。もしそうだとしたら、それはそれで一つの解釈とも言えます。
一方、中原先生は a の用法を 関係代名詞の as としています。たしかに、節の中で名詞が欠けているようにも見えるので、これを関係代名詞の非制限用法と考えるのは一理あります。しかし、この know を自動詞と考えたらどうでしょうか?know という動詞は、以下のように目的語を省略して(自動詞として)使われることも少なくありません。
- How should I know?(どうして私が知っているというのか?)
- As far as I know, that's correct.(私が知っている限り、それは正しい)
そう考えると、Pollution, (as you know), is ~. という文で as が導く節は名詞が欠けていないので、副詞節ということになり、いかにも「様態の as」に見えます。
ここまでの説明で、この as がいかに微妙なものかということが分かってもらえたと思います。as I know と as I know it を文法的にどう考えようと、意味の理解の上では大差ありません。受験生の皆さんは、この as で悩まないでください!。
ただし「『名詞限定』という不思議な用法の as がある」ということは、辞書にも載っていることですので、覚えておいてもよいでしょう。あるいは、[名詞] + <as we know it>(私たちが知っているような[名詞])を慣用表現として覚えてしまう手もあるかもしれません。いずれにしても、as いう単語は極めて多く使われるので、きれいに分類できないさまざまな不規則な用法があるのだと私は考えています。
設問
問F
正解は選択肢1の hours of work(労働時間) ですが、選択肢2の labor problems(労働問題)を選んでしまった人はいないでしょうか? labor problems は、労働時間の問題以外にも、賃金、解雇、パワハラ等々、労働に関連して起こりうるさまざまな問題を含みます。よって、increased productivity(増加した生産性)だけで改善できるものではないので、適切ではありません。
問G
正解は選択肢2の have to be developed(作り出されなければならない)ですが、選択肢5の have to be advanced(向上されなければならない)を選んでしまった人はいないでしょうか?この文の主語は New patterns of income distribution(所得配分の新しい方法)ですが、もしこれが new のない patterns((すでにある)方法) だったら be advanced(向上される)もアリかもしれませんが、new patterns(新しい方法)ですので、be developed(開発される⇒作り出される)が自然です。
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