目的格補語とは?
ここでは、目的格補語として使われる準動詞(to不定詞、原形不定詞、現在分詞、過去分詞)の使い分けについて解説します。「目的格補語」とは、第五文型(SVOC)の C(補語)のことを言います。ここで説明することは、「現在分詞と過去分詞の使い分け」「to不定詞と原形不定詞の違い」「使役動詞の have と get の違い」「知覚動詞の補語、原形不定詞と現在分詞の違い「目的格補語の品詞」「動詞の語法」等々、さまざまなテーマで語られる内容ですが、これらのことは、全てひっくるめて「第五文型のOとCの関係」という大きな視点でとらえると分かりやすくすなります。
以下の図を見てください。
まず「SVOC(第五文型)のOとCの間には主語・述語の関係がある」ということを意識してください。OとCの関係は、しばしば「O=C」や「SV関係」などと説明されることがありますが、私はあえて日本語らしい「主語・述語の関係」と呼んでいます。この「述語」という言葉は何かと便利で「Oは~だ」「Oは~する」「Oは~される」の全てをカバーすることができます。
五文型を学習する初期の段階では、補語(C)になりうる品詞は「名詞と形容詞」と説明されますが、実はそれ以外に「準動詞」も補語になることができます。「目的語(O)」と「その後ろの要素」との間に、主語・述語の関係があったら、その要素は全て「補語(C)」で、その文は第五文型なのです。補語が名詞・形容詞の場合は「Oは~だ(O=C)」ですが、補語が準動詞の場合は「Oは~する/~される」となります。
- SVOC の C(目的格補語)になれるもの
- ⇒ 名詞・形容詞(Oは~だ)
- ⇒ 準動詞(Oは~する/~される)
能動か受動か
ここからが本題です。ここでは、目的格補語が準動詞の場合の、それらの使い分けに関して話を進めていきます。冒頭でも説明した通り、準動詞には、to不定詞、原形不定詞、現在分詞、過去分詞がありますが(※)、これらは大きく、OとC の間の関係が「能動」か「受動」かの2グループに分けて考えてください。
※動名詞も準動詞ですが、ここでは対象外なので触れません
問題文を見て、その文が「第五文型」で、且つ「補語が準動詞」だと分かったら、まずは目的語を主語っぽく「…は(が)」と言ってみます。そしてその後ろの準動詞の述語的なつながりを見て「~する」と言えたら、それは「能動」関係で、「~される」と言えたら「受動」関係です。
- I got him to do the job. ⇒「彼」は「する」【能動】
(私は彼にその仕事をしてもらった) - I made him do the job. ⇒「彼」は「する」【能動】
(私は彼にその仕事をさせた) - I saw him doing the job. ⇒「彼」は「する」【能動】
(私は彼がその仕事をしているのを見た) - I had the job done. ⇒「その仕事」は「される」【受動】
(私はその仕事をしてもらった)
「to不定詞、原形不定詞、現在分詞」は能動グループで、「過去分詞」だけが受動グループです。
- 能動 ⇒ to不定詞(to do)、原形不定詞(do)、現在分詞(doing)
- 受動 ⇒ 過去分詞(done)
「能動」と「受動」の区別は非常に重要です。この手の問題では、多くの受験生は、「get って do だっけ? to do だっけ?」などと「能動」グループの中での切り分けに気をとられがちですが、それよりもまず最初に「能動」か「受動」かを切り分けてください。もし「受動」だったら、何も悩む必要はなく、done(過去分詞)を選べばよいのです。「能動」だと分かったら、その時点で初めて「この動詞は to do / do / doing のどれだっけ?」と、能動グループの中での切り分けにとりかかってください。
その動詞が to do / do / doing のいずれをとるのか?ということは、その動詞ごとに決まっています。いわゆる「動詞の語法」です。よって、残念ながら、これについては覚えなくはいけません。
重要動詞の語法(原則)
以下が入試問題頻出の重要動詞の語法です(上段が能動、下段が受動)。※印がついているものについては、例外があるので「補足」の項で説明を補足します。
- 使役動詞+O+
(make,have,let)
done(※)
- get+O+
(使役動詞もどき)
done
- 知覚動詞+O+
(see,hear,feel等)
done
- keep/leave+O+
done
受動についてはいずれも done であることに注目してください。能動の場合はさまざまですが、大した数ではないので、頑張って覚えてください。
知覚動詞ではの場合、do(原型「~する」)と doing(現在分詞「~している」)の両方が可能ですが、その意味の違いについてはあえてここでは触れません。do も doing も同じ能動グループだということのほうがはるかに重要です。
尚、「使役動詞」「知覚動詞」とは、原形不定詞を目的格補語にとることができる動詞のことを呼ぶのが一般的です。例えば、get は意味的には have とよく似ていますが、目的格補語は原形不定詞ではなく to不定詞なので、私は「使役動詞もどき」と呼んでいます。「使役動詞」と「使役動詞もどき」との書き換えについては、「書き換え公式」の項も参照してください。また、以下の記事でも関連した内容をご紹介しています。
【関連記事】find の語法。findは知覚動詞?受動態の補語はどうなる?
V+O+to do 型動詞の語法
実は、前項で挙げた、使役動詞、知覚動詞、keep/leave は非常に少数派で、第五文型をとるその他大多数の動詞は、get を含め、V+O+to do という形をとり、目的格補語は to do(to不定詞)になります。
- want, tell, ask, allow, enable, encourage, force, advise, expect など多数 +O+ to do
- help +O+ to do / do
要注意なのが help で、help の目的格補語は to do だけでなく do も可能です。このように、to do と do を併用できる動詞は help だけですので、十分気を付けて覚えておいてください。
書き換え公式(使役動詞もどき)
また、これらの V+O+to do 型の動詞の中には、使役動詞と意味が非常に近い「使役動詞もどき」あります。本家の使役動詞との書き換え公式として覚えておくと便利です。do と to do の違いに注目してください。
- 「Oに~してもらう」(依頼)
- have+O+do
- ≒ get+O+to do
- 「Oに~させる、することを許す」(許可)
- let+O+do
- ≒ allow+O+to do
- 「Oに~させる」(強制)
- make+O+do
- ≒ force+O+to do
尚、ここで説明していることは主にOとCが能動関係のときの話です。受動関係については以下の「補足」で説明します。
原形不定詞を目的格補語にとる動詞
また、help が目的格補語に to do と do の両方をとることができると述べましたが、原形不定詞を目的格補語にとることができるのは、「使役動詞」「知覚動詞」「help」の3種類だけです。
- 使役動詞+O+do
- 知覚動詞+O+do(他に doing も可)
- help+O+do(他に to do も可)
この観点は、選択肢を選ぶ(絞る)上でとても役立つので、是非覚えておいてください。
補足
実は、ここまでの説明はあえて一部を端折ってきました。以下、説明を補足しますが、細かく長い説明になるので、デフォルトでは非表示にしています。細かいことが気になる方だけ読んでください。
まとめ/暗記ポイント
以上、目的格補語の準動詞の使い分けについて説明してきました。この手の文法問題は、OとCの間の関係が「能動」か「受動」に注目することが最大のポイントです。また、動詞の語法は覚えるのが面倒ですが、さまざまな観点から動詞を整理することによって、少しは覚えやすくなるかと思います。以下で、この記事の暗記ポイントをまとめていますので、確認してみてください。
- 第五文型のOとCの間にはどんな関係がある?
- 目的格補語が準動詞の問題で最初に考えるべきことは?
- OとCの関係が受動だったら?
- OとCの関係が能動だったら?
- 使役動詞(make, have, let)の語法(S+V+O+?)
- get の語法(S+V+O+?)
- 知覚動詞の語法(S+V+O+?)
- keep/leave の語法(S+V+O+?)
- want, tell, ask, allow, enable, encourage, force, advise, expect などの語法(S+V+O+?)
- help の語法(S+V+O+?)
- 使役動詞 have の書き換え
- 使役動詞 let の書き換え
- 使役動詞 make の書き換え
- 原形不定詞を目的格補語にとることができる3種類の動詞
また、以下の記事では、目的格補語の準動詞の使い分けについてさまざまな練習問題をたっぷり紹介しています。この記事では詳しく触れていないパターンも含まれていますので、是非チャレンジしてみてください。
【関連記事】
目的格補語の準動詞の使い分け、使役動詞・知覚動詞等の問題の解き方 練習問題