強調構文の見分け方(形式主語構文や関係代名詞との違い)

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It is ~ that … の形を見て「これは何の that だろう?」と悩んだことはありませんか?It is ~ that … の形は強調構文が有名ですが、他にも形式主語構文関係代名詞同格の that もこの形を取ることがあり、正しく見分けないと、英文の解釈がおかしくなってしまいます。ここでは、これらの見分け方について解説します。

尚、強調構文についての理解が不十分な人は、先に以下の記事を読むことをおすすめします。
【関連記事】強調構文とは?(作り方、訳し方、例文などの基本)

It is ~ that … の形を取りうる構文一覧

以下が It is ~ that … 形を取りうる構文と、それぞれのざっくりとした特徴の一覧です。

以下で、強調構文とそれ以外との見分け方について詳しく説明していきます。

強調構文と形式主語構文との区別

It is ~ that … の形を見たら、まずは It is と that の間にはさまれているものが、副詞形容詞であるかに注目しましょう。はさまれているものが、

  • 副詞  なら 強調構文
  • 形容詞 なら 形式主語構文

です。その時点で、それ以外の可能性、つまり関係代名詞や、同格の that の可能性は絶対にありません。尚、「副詞」というのは「副詞句」や「副詞節」も含みます。

強調構文の例:

  • It was yesterday that he went there.【副詞
    (彼がそこに行ったのは昨日だった)
  • It is in Tokyo that I live.【副詞句
    (私が住んでいるのは東京だ)
  • It was because I was sick that I was absent.【副詞節
    (私が休んだのは病気だったからだ)

形式主語構文の例:

  • It was true that Tom loved Mary.【形容詞
    (トムがメアリーを愛していたのは本当だ)
  • It is natural that he should get angry.【形容詞
    (彼が怒るのは当然だ)

ただし、はさまれているものが名詞の場合は、いろいろな可能性を考えないといけません。まずここでは、強調構文と形式主語構文の区別に話を限定しますが、次に注目すべきことは「that 以降が完全文か不完全文か」ということです。that 以降

  • 不完全文 なら 強調構文
  • 完全文  なら 形式主語構文

になります。

強調構文の例

  • It is Mary that I love.【不完全文(目的語が欠落)】
    (私が愛しているのはメアリーだ)

形式主語構文の例:

  • It is a pity that Mary can’t come.【完全文
    (メアリーが来られないのは残念だ)

尚、形式主語構文で it is と that の間に名詞が来ることはあまり多くなく、以下のような少数に限られます。

形式主語構文で使われる代表的な名詞の例:

  • pity(残念)、shame(残念)、surprise(驚き)、wonder(驚き)、fun(楽しみ)、mystery(謎)

これらはどれも人間の感情を表す名詞です。また、品詞としては名詞ですが、意味的に形容詞っぽいと言えるかもしれません。これらの名詞を見たら形式主語構文であることを予想してください。

また、当然ながら形式主語構文it が指すものは後続の that 節です。もし it is 名詞 that … の形で、it が指すものがそれ以前にあったら、それはおそらく同格の that でしょう。詳しくは後述します。

一方、もう一つ別の考え方として、はさまれているものが何であれ(副詞・形容詞・名詞を問わず)、

  • It is と that を取り除いたもので正しい文を組み立てることができる
    なら 強調構文
  • It is と that を取り除いたもので正しい文を組み立てることができない
    なら 形式主語構文

ということも言えます。これは非常に重要な考え方ですのでよく理解してください。

強調構文の例

  • It was yesterday that he went there.
    ⇒ Yesterday he went there. と言える
  • It is Mary that I love.
    ⇒ Mary I love. [⇒ I love Mary. ] と言える

形式主語構文の例:

  • It was true that Tom loved Mary.
    ⇒  True Tom loved Mary. とは言えない
  • It is a pity that Mary can’t come.
    ⇒ A pity Mary can’t come. とは言えない

強調構文と同格の that との区別

強調構文と同格の that の区別に関しては、あまり話題になることはありませんが、一応確認しておきましょう。この2つはどちらも「It is と that にはさまれているものが名詞」という点では共通しています。違いは、that 以降が

  • 不完全文 なら 強調構文
  • 完全文  なら 同格の that

ということです。

強調構文の例

  • It is the fact that I have wanted to know.【不完全文(目的語が欠落)】
    (私が知りたかったのはその事実だ)

同格の that の例:

  • There is one issue I want to raise. It is the fact that the crime rate is increasing.【完全文
    (取り上げたい問題が一つある。それは、犯罪率が上昇しているこという事実だ)

同格の that の場合は、it が普通の代名詞で、その前に指すものがあるということに注目してください(上の例文では it = the issue)。

また、この場合も、

  • It is と that を取り除いたもので正しい文を組み立てることができる
    なら 強調構文
  • It is と that を取り除いたもので正しい文を組み立てることができない
    なら 同格の that

という観点からも判断することができます。

強調構文の例

  • It is the fact that I have wanted to know.
    ⇒ The fact I have wanted to know. [⇒ I have wanted to know the fact. ] と言える

同格の thatの例:

  • It is the fact that the crime rate is increasing.
    ⇒  The fact the crime rate is increasing とは言えない

ただし、そもそも it is ~ that … の that が同格である文を目にする機会はあまり多くありません。また、同格の that 節が説明する名詞は何でも許されるわけではなく、事実(fact等)・考え(idea等)・可能性(possibility等)系の名詞に限られます。実際問題、強調構文と同格の that の区別で悩む機会はほとんどないと言ってよいでしょう。

強調構文と関係代名詞 that との区別

厄介なのは、強調構文と関係代名詞 that との区別です。この2つについてはどちらも、that 以降が不完全文であり、It is と that を取り除いたもので正しい文を組み立てることができます。結論から言うと、この2つは見た目では区別ができません。例えば、以下のような文は、単体ではどちらとも解釈することができます。

  • It is the quality that is really important.
    (本当に重要なのは質だ) ⇒【強調構文
    (それは本当に重要な質だ)⇒【関係代名詞

では、どうやって区別するか?結論から言うと、結局は文脈で判断ということになるのですが、いくつか判断の基準になるポイントがあります。以下の例文を見てください。

  • He is very positive. It is the quality that is really important.
    (彼はとても前向きだ。それは本当に重要な資質だ)⇒【関係代名詞
    it = 前向きである(こと)[very positive]
  • The quantity is not the problem. It is the quality that is really important.
    (量は問題ではない。本当に大事なのは質だ)⇒【強調構文
    it の指すものはない。quantity と quality が対比されている

大きなポイントは、It の指すものがそれ以前にあるかどうか?ということです。関係代名詞の場合の it は普通の代名詞なので、その前に指すものがあります。上の例文の場合は、it = 前向きである(こと)[very positive] です。よって、

  • it の指すものがある 場合は 関係代名詞
  • it の指すものがない 場合は 強調構文

と判断できます。

もう一つのポイントは、強調構文は対比の文脈で使われるということです。「強調されているもの」とはつまり話者の主張したいことであり、その前後にはそれと対照的なものが置かれていることが多いです。上の例文では、quantity(量)と quality(質)が対比されています。 これは、not A but B 的な対比と考えてもよいでしょう。実際、強調構文は not A but B のコンビネーションで使われることも多く、上の例文は、以下のように言い換えることができます。

  • It is not the quantity but the quality that is really important.
    (本当に大事なのは量ではなく質だ)
  • It is the quality that is really important, not the quantity.
    (本当に大事なのは質であり、量ではない)

よって、

  • 前後に対照的なものがある 場合は 強調構文
  • 前後に対照的なものがない 場合は 関係代名詞

と言ってもよいでしょう。

裏技

そうは言っても、難解な論説文では、it が何を指しているのか、何と何が対比されているのか、読み取れないということもあるかもしれません。そこで、ちょっと邪道ですが、入試では役立つ裏技を伝授します。それは

  • 下線部和訳問題の It is ~ that … は強調構文

ということです。出題者の意図を想像してください。もし仮に it が何かを指しているなら、出題者はそれが読み取れているかどうかを確認したいでしょう。その場合、出題者は「it が指すものを明らかにして訳しなさい」という指示を出すはずです。その場合の that は関係代名詞ということになりますが、そのような指示がある和訳問題は多くありません。

つまり、特に指示がない和訳問題であれば、it は何も指していない、つまりその It is ~ that … は強調構文だということになります。この場合の出題者の意図は、この文が強調構文であることを読み取れているかどうかの確認です。

また、もう一つ最後の手段として、どうしても強調構文か関係代名詞か全く判断できない場合は、強調構文の方に賭けてください。私の経験上、It is 名詞 that 不完全文 の形は、圧倒的に強調構文が多いです。

  • 悩んだら強調構文

と覚えておいて損はありません。

まとめ

最後に、ここまでの説明をフローチャート形式でまとめておきます。

  • it is と that を取り除いたもので正しい文を作ることができる
    強調構文 または 関係代名詞の that
  • it is と that を取り除いたもので正しい文を作ることができない
    形式主語構文 または 同格の that
  • it is 名詞 that 不完全文 の形は、強調構文が多い

いろいろとややこしいことを書いてきましたが、慣れればこれらのことは考えなくても区別できるようになります。是非多くの英文に触れて、少しずつ慣れていってください。

  • B!