all the more[比較級] ~ の使い方、なぜそういう意味になる?

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比較にはさまざまな慣用表現がありますが、その中でも特に定着度に低いものの一つに all the more[比較級] ~ があります。今回はこれについて詳しく説明します。

前提1:比較級の前にあるものは「差分」!

まず、説明を始める前に、確認しておきたい重要なポイントがあります。それは、比較級の前にあるものは基本的に差分であるということです。以下のような例文を考えるとよく分かると思います。

Tom is two inches taller than John.
(背の高さの差が「2インチ」)
Tom is a little taller than John.
(背の高さの差が「少し」)
Tom is much taller than John.
(背の高さの差が「たくさん」)

このことは、比較のさまざまな表現を理解する上で非常に役に立ちます。是非しっかり頭に留めておいてください。
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前提2:「その分」を表す the

さて、all the more[比較級] ~ を理解する上での最大のポイントは、the の使い方です。実は、この the副詞(指示副詞)で、「その分」という意味(差分)を表しています。the に副詞があるとは知らなかった人が多いのではないでしょうか。まあ、普通の受験生はこの品詞を意識する必要はありませんが、「その分」を表す the があるということは是非覚えてください。

「the + 比較級, the + 比較級」と同じ

実はこの使い方の the は、あの有名な「the + 比較級, the + 比較級(~すればするほどますます…)」で使われているのと同じものです。

The longer you work, the more you will earn.
(長く働けば働くほどよけいに稼ぐことになる)

時給制の仕事を想像してください。働いた時間が、そっくりその分給料に反映されますね。つまり、
長く働いた差分(the longer)」=「より多く稼ぐ差分(the more)」
であることを表しています。正比例のグラフをイメージするとよいかもしれません。


直訳:長く働けば働いただけその分、より多く稼ぐことになる

比較級の前にあるものは差分」であることを意識すると、この表現もより分かりやすくなるでしょう。

ちなみに、厳密に言うと一つ目の the と二つ目の the は文法的には別物とされています(※一つ目は関係副詞)。しかし、どちらも「差分」を表していることには違いなく、そのことのほうがはるかに重要です。

the 比較級 = for/because ~ の内容

さて、本題の all the more[比較級] ~ の説明に入ります。

「the + 比較級, the + 比較級」を見ても分かるように、その分」の the を使うときは、必ずそれに対応するものがあります。「その分」だけでは、「どの分?」か分かりませんよね。

all the more[比較級]の場合、その「the 比較級」が指すもの(どの分?)は、それ以降にある(ことが多い)for/because ~ の内容です。例文を見てみましょう。

I like him all the better for his frankness.
(私は彼が正直だからよりいっそう好きだ)

おそらく、私はもともと彼のことが好きなのです。そこに「彼の正直さ(his frankness)」というプラス要素が加わり、その分上乗せ(the better)で彼のことが好きだ、ということを表しています。


直訳:私は彼の正直さのために、その分よりいっそう彼のことが好きだ
for は「~のために」という意味の理由を表す前置詞

もう一つ例文を見ておきましょう。以下は理由を表す接続詞because を使うパターンです。

I was all the more excited because the game was really close.
(私は試合が接戦だったので、いっそう興奮した)

おそらくこの人はあるチームのファンで、その試合を見るときはいつも興奮しているはずです。それが、この試合に関しては、「試合が接戦(he game was really close)」というプラス要素が加わったため、その分上乗せでより興奮している(the more excited)ということを表しています。


直訳:私は試合が接戦だったので、その分よりいっそう興奮した

all はないこともある!

さて、ここまで「the + 比較級」の前についていることが多い all のことについて触れていませんでしたが、実はこの all は副詞で、ただの強調です。強いて一語一語訳すならこの all は「いっそう」で、例えば all the more の場合なら「all=いっそう」「the=その分」「more=より多く」ということになるでしょう。

大事なことは、この all はただの強調なので、ないこともあるということです。参考書などには、あたかも「all the more[比較級]」がセットになっているかのような書きぶりをしているものがありますが、これは誤解を招く非常によくない表現です。例えば上で紹介した例文も、all が省略され

I like him the better for his frankness.
I was the more excited because the game was really close.

となることは普通にあります。このような場合でも、同じ意味の構文だということに気づけるようにしてください。

for/because がないこともある!

また、この構文のときにいつも for/because~ があるわけではないということにも注意してください。大事なことは、その分」の the があるときにはそれに対応するものがあるということで、意味的に対応するものであれば何でもよいのです。

If we start now, we will be back the sooner.


(私たちがいま出発すれば、(その分)早く帰れるだろう)

The danger seems to make surfing the more exciting.


(危険が、(その分)サーフィンをより楽しいものにするように思える)

こうして見ると、この表現で大事なことは、all でもなく for/because でもなく、何よりも比較級の前についている the が大事だということがよく分かるのではないでしょうか。

none the 比較級 もある!

ここまで理解すれば、関連表現である none the 比較級 もスムーズに理解できるでしょう。これは all the 比較級 の allnone に代わったもので、all は「強調」でしたが、none は「否定(決して~ない)」で、意味が逆になるだけです。

I like him none the worse for his faults.
直訳:私は、彼の欠点のためにその分彼を好きでなくなるということは決してない
意訳:彼には欠点はあるが、それでも私は彼が好きだ.

The film is none the more wonderful for all the production costs.
直訳:その映画は、全ての製作費が理由でその分面白いということは決してない
意訳:その映画は、製作費をかけたにもかかわらず全く面白くない

It is none the less true because it sounds strange.
直訳:それは、奇妙に聞こえるからその分本当でないということは決してない
意訳:それは、奇妙に聞こえるがそれでもやはり事実だ

ちなみに、nonenever に置き換えられることがあります。それが一語に縮まったのが、接続副詞neverthelessnonetheless](それにもかかわらず)です。

It it sounds strange. Nevertheless[Nonetheless], it is true.
(それは、奇妙に聞こえるが、それでもやはり事実だ)

まとめ/練習問題

all the more[比較級] は、決して丸暗記する慣用表現ではなく、理解して覚える慣用表現です。理解して覚えれば、さまざまな変形パターンにも必ず対応できます。以下に練習問題を用意しましたので、the(その分)が指しているものが何か?をよく考えながら、理解度を確認してみてください。

1. 次の英文のカッコ内に入れるのに最も適当なものを選びなさい。

  • She says she loves him all (  ) for his character.
    ① more ② less ③ the more ④ the most 
  • I like the boy (  ) better for his naughtiness.
    ① some ② any ③ all the ④ much a 
  • When we are told not to come, we become (  ) eager to go.
    ① too far ② all the more ③ too much
    ④ to the utmost ⑤ instead of it 
  • We had been complaining to the director. And one of my colleagues said, “Don’t talk back to him. That’ll make it (  ).”
    ① as bad ② no sooner ③ all the worse ④ not at all 
  • A good tale is none the (  ) for being twice told.
    ① least ② worse ③ excellence ④ good 
  • Although intonation is seldom taught in language courses, it is (  ) important for communicating accurately.
    ① all the more  ② none the less
    ③ none the worse ④ much more 

2. 次の英文のカッコ内の語を並べ替えて、正しい英文を作りなさい。

  • 私は彼女に弱点があるので、よりいっそう好きだ。
    I like her all ( weak / the / points / for / better / her ). 
  • 必死に隠そうとしているので、彼女の心配ぶりは見るも余計に痛ましかった。
    Her anxiety was all ( she / pitiful / the / to / more / see / because ) took such pains to hide it. 
  • この薬を飲んでも少しもよくなっていないのよ。
    I am ( for / none / better / this / taking / the ) medicine. 
  • 二つ目の事故が起きても、それでより悲しいわけではないのだった。
    ( accident / be / for / found / I / myself / none / second / the / the / to ). ※一語不足 
  • B!