「譲歩構文」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?どちらかというと国語や小論文で多く使われる用語かもしれませんが、英語にも譲歩構文はあります。今回は、長文読解で大いに役立つ、この「譲歩構文」について解説します。
目次
譲歩構文とは?[譲歩構文一覧]
譲歩構文とは、「たしかに~だ。しかし…」のように、一般論や反論したい考えをいったん認めつつ、その直後にそれとは異なる自分の主張を述べる構文のことを言います。
譲歩構文には以下のようなものがあります。
- It is true (that) ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Truly ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- True ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- To be sure ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Surely ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Certainly ~, but …(たしかに~だ、しかし…)
- Indeed ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- Of course ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- No doubt ~, but …(もちろん~だ、しかし…)
- S may[might] V, but …(~かもしれない、しかし…)
- S seem[look] (that) ~, but …(~のように見える、しかし…)
- Seemingly (that) ~, but …(見かけでは~、しかし…)
- on the surface (that) ~, but …(表面上は~、しかし…)
- S do V(※強調の do), but …(たしかに~する、しかし…)
- I admit ~, but …(~は認める、しかし…)
- Admittedly ~, but …(たしかに~、しかし…)
- Granted ~, but …(たしかに~、しかし…)
- I understand ~, but …(~は理解している、しかし…)
- I am not saying ~ , but …(~と言っているわけではない、しかし…)
- This is not to say ~ , but …(~と言っているわけではない、しかし…)
- many ~, but …(多くは~、しかし…)
- generally ~, but …(一般には~、しかし…)
- commonly ~, but …(一般には~、しかし…)
- on the whole ~, but …(概して~、しかし…)
- in many cases ~, but …(多くの場合、しかし…)
- in most cases ~, but …(たいていの場合~、しかし…)
- typically ~, but …(典型的には~、しかし…)
- usually / often / sometimes ~, but …(たいてい/しばしば/時々~、しかし…)
- in theory ~, but …(理論的には~、しかし…)
- At first ~, but …(最初は~、しかし…)
- Initially ~, but …(最初は~、しかし…)
※ but は however や yet などの逆接の接続詞[接続副詞]に置き換えられます
「こんなにあるのか!」と驚いた人もいるのではないでしょうか。全てを丸暗記する必要はなく、最初はこれらのうちいくつかを覚えておくだけで十分です。大事なことは、その書き出し(It's true や Of course など)を見たら、「この後に but が来るぞ」と予想しながら読むということで、そのうちに自然と「あ、これも譲歩構文だな」ということが分かるようになってきます。
ちなみに一つ断っておきたいのは、「譲歩構文」と言うと、although や even if などの「譲歩」の接続詞を使った文のことと考える人もいるかもしれません。しかし、例えば although の場合、それ自体が「~だけれども」という譲歩の意味を持っているだけであって、「構文」と呼ぶほどのものではないため、今回のリストの中には含めていません。ただし、もちろん これらの接続詞も重要なディスコースマーカーではあります。
というわけで、今回ご紹介している「譲歩構文」とは、文の前半に現れる It's true や Of course などの語句が、後半の but と相関的に用いられる文のことだと考えてください。
譲歩構文を覚えておくメリット
譲歩構文を覚えておくことにはさまざまなメリットがあります。
先の展開を予想できる
例えば It's true を見かけたら、「この後に but が来るぞ」と予想して読み進めることができます。面倒な英文読解において、先の展開を予想することができたら、読むのがぐっと楽になりますね。
読解の精度が上がる
すでに述べたように、筆者の主張は but 以降にあります。筆者の主張をしっかり把握しながら読み進めることができれば、なんとなく読み進めるのに比べて、読解の精度は圧倒的に高くなります。
読むのが速くなる
また、「筆者の主張が but 以降にある」ということは、逆に言うと、It's true ~ の中身にあるものは筆者の主張ではないため、重要ではありません。よって流し読みしてもOKなので、読解のスピードが上がります。もし分からない単語があっても悩む必要もありません。
例文・解説
いくつかの重要な構文について、例文や注意点をご紹介しておきます。
It is true ~ but …
It is true that he is handsome, but he is not bright.
(たしかに彼はハンサムだが、あまり賢くない)
※主張は「彼があまり賢くない」ということ
見た目にも分かりやすい、最も基本的な譲歩構文です。It is が省略されて True だけになることもあります。その他 Truly や Certainly 、To be sure なども、元の意味が「たしかに」ですので、これらはまとめて覚えてしまうとよいでしょう。
Indeed ~ but …
Indeed he is famous, but he is very modest.
(たしかに彼は有名だが、とても謙虚だ)
※主張は「彼がとても謙虚だ」ということ
indeed は非常にクセモノの単語ですが、譲歩構文で使われることがあるということをよく覚えておいてください。indeed には超重要な意味が2つあります。
- たしかに、なるほど(※but と共に譲歩構文として)
- もっとはっきり言えば(※具体化のディスコースマーカーとして)
長文読解でお目にかかるのは、ほとんどの場合このどちらかです。indeed の意味を「実に」「実際に」として覚えている人が多いかと思いますが、その訳がしっくり来ることはめったにありません。indeed について詳しくは以下の記事で紹介していますので、是非そちらも参照してください。
【関連記事】indeed の意味・使い方・例文、文頭では?
S may[might] V, but …
You may laugh, but it's true.
(あなたは笑うかもしれないが、それは本当だ)
※主張は「それが本当だ」ということ
一見すると何気ない助動詞ですが、実は may や might は譲歩構文を導くことが非常に多いです。見逃しやすいので注意してください。
It seems (that) ~, but …
Her lifestyle seems enviable, but she's not happy in her job.
(彼女の生活スタイルは羨ましく見えますが、彼女は自分の仕事に満足していません)
※主張は「彼女が自分の仕事に満足していない」ということ
外見から推測されることが実際には事実ではない、と述べるパターンです。seemingly や on the surface も類似表現と言えます。
many ~, but …
Many can achieve success, but fewer can actually sustain it.
(成功を収める人は多いが、成功を維持できる人は少ない)
※主張は「成功を維持できる人は少ない」ということ
「多数派は~かもしれないが、主張したいことはその逆」というパターンで、これも見逃しやすいですが頻出です。in many [most] cases は類似表現と言えます。
S do V(※強調の do), but …
The idea does make sense but I can't go in for it.
(その考えは確かに道理にかなっているが、私は賛成はできない)
※主張は「私は賛成はできない」ということ
強調の do は「本当に、確かに」などを意味する表現ですので、譲歩構文を導くことがあります。
At first ~, but …
At first I didn't like his idea, but on second thought it isn't so bad.
(初めは彼のアイデアを気に入らなかったが、よく考えてみたらそんなに悪くない)
※主張は「彼のアイデアは実はそんなに悪くない」ということ
現在の考えや状況が、当初のものとは変わってきたと述べるパターンです。Initially も類似パターンと言えます。ちなみに、firstly や first of all などは並列(列挙)を表す表現で、at first とは意味が全く違いますので注意してください。
【関連記事】at first の意味・使い方、firstlyとの違い