in turn という熟語の日本語訳を見て疑問に感じたことはないでしょうか?名詞 turn には「順番」という意味がありますので、「順番に」と訳すなら分かりやすいのですが、「次に」「今度は」「同様に」などと訳されることも多く、なぜそのような意味になるのか?と疑問に思うかもしれません。はたして in turn はどういうニュアンスなのか?どう訳すべきなのか?今回は in turn の意味について詳しく解説します。
目次
基本の意味
まず、名詞 turn に「順番」という意味があることを改めて確認しておきましょう。
It's your turn.
(お前の番だよ)
They are waiting for their turn.
(彼らは自分の順番を待っている)
この名詞の意味から、熟語 in turn の基本的な意味である「順番に」が生まれました。
ただしここで一つ注意点があります。「順番に」には以下の2つの異なるイメージがあるということです。
(3人以上で)順番に、次々に
もし当事者が3人以上いれば、以下のようなイメージになります。
A ⇒ B ⇒ C ⇒ … のように、人が次々に入れ替わっていくイメージですね。この場合の in turn は「次々に」と訳すこともできます。
The teacher interviewed all the students in turn.
(先生は全ての生徒と順番に[次々に]面談した)
(2人で)順番に、交代で
一方、もし2人しかいなかったら、以下のようなイメージになります。
「A→B」「A←B」「A→B」… のように矢印が入れ代わり、A と B が順々に交代していくイメージですね。この場合はの in turn は「交代で」と訳すこともできます。
The two sisters nursed their mother in turn.
(その二人の姉妹は、順番に[交代で]母親を看病した)
派生した意味
さて、ここからが本題です。in turn には、ここまで説明した2つのイメージからそれぞれ派生した使い方(訳し方)があります。
1つは、「次々に」のイメージの中の矢印の一つ「A→B」のみに焦点が当たっているイメージです。
もう1つは、「交代で」のイメージの「A→B」の後に起こる「A←B」に焦点が当たっているイメージです。
in turn を見たら、このイメージのどちらかを考えてみてください。これらのイメージをどう日本語にするかは日本語のセンスが問われるところで、いろいろな和訳が可能です。実際に例文を見ていきましょう。
「A→B」のイメージ:次に、今度は、その結果 etc
このイメージのときは「次に」が基本の訳です。「A の次に B が起こる」ということで、物事の推移や変化を表します。
Interest rates were cut and, in turn, share prices rose.
(金利が下げられ、その次に[続いて、その結果]株価が上がった)
「次に」という訳で言いたいことはばっちりつかめますね。ただし日本語訳としては必ずしもうまくないので、この例文では「続いて」や「その結果」などと訳すと多少はカッコいいかもしれません。
I was hard on my eldest son, and he, in turn, was mean to his little brother.
(私は長男につらく当たった。そして、今度は[同様に]長男が弟に対してつらく当たった)
この例文では当事者が3人出てくるので、A→B というより、厳密には A→B→C ですが、要は「左から右」のイメージと考えてください。内容的にはまさに「次に」なのですが、日本語訳としてはどうもイマイチです。そこで、「今度は」と訳すか、またはちょっと発想を変えて、「私が長男にしたのと同じように」という意味で「同様に」と訳してもよいでしょう。
次はちょっと長い文です。
In the year 2000, while America was caught up in the excitement of the presidential race, my mind was focused on movements in New York stock prices and the Yen-Dollar exchange rate. The reason -- both are important indicators for discerning prospects that lie ahead for the U.S. economy, which in turn dictate the future direction of the global economy.
(2000年、アメリカが大統領選挙にわいていたとき、私の注目はニューヨークの株価と円ドル・レートの推移にあった。その理由は、どちらもアメリカ経済の前途、ひいては今後の世界経済の方向性を示す重要な指標だからである)
この例文の「A→B」は、Aが「アメリカ経済の前途」、Bが「世界経済の方向性」です。こういったちょっと固い文で、「AのことがBにもつながる」的な文脈では、「ひいては」と訳すとカッコいいでしょう。
「A←B」のイメージ:今度は、同様に etc
このような「A→B」の後に起こる「A←B」は、日本語にすると「お返し」のイメージです。
He sang for me and I in turn played my guitar for him.
(彼は歌い、それに応え[お返しに]私はギターを弾いた[今度は私がギターを弾いた])
この例文は「お返し」感がよく表れていると思います。和訳は「それに応え」としましたが、文脈によっては「お返しに」をそのまま使ってもよいと思います。または、「順番的に彼の次に」という意味で「今度は」でもよいでしょう。実際は、このイメージの場合は「今度は」という訳がうまくいくことが多いです。
If you love others, you will be loved in turn.
(他者を愛すれば、今度は[同様に]自分が愛されるだろう)
この例文も「今度は」がうまくいきます。または「同じことが起こる」という意味で、「同様に」と訳してもよいでしょう。
In recognition of the Parisian fashion world, he named the first artificial dye after the French name of a purple plant: mauve. The French, in turn, would call it Perkin's purple.
(パリのファッション界の状況を考慮して、彼は最初の人工染料をフランスの植物の名前にちなんで「mauve(モーヴ)」と名付けた。そしてフランス人が逆にそれを「パーキンの紫」と呼んだ)
イギリス人のパーキンという人が開発した紫色の染料が、フランスで爆発的に受けたという話の一節です。イギリス人がフランス語の名前をつけ、フランス人がそのことに敬意で応える(お返しする)形で、それを英語で呼んだ、というのがこの話のポイントです。ここでは「逆に」と訳しましたが、他にもいろいろな訳し方がありそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?in turn を「次に」「今度は」「同様に」などと訳す理由がなんとなくでも分かってもらえたら幸いです。in turn の訳はなかなか難しく、他にもいろいろな訳し方が考えられますし、場合によっては訳さないほうが自然なこともあります。
ただいずれにしても、その in turn が 2つのパターンのどちらの使い方なのか?を考えることで、どう訳せばよいのかも分かりやすくなると思います。以下に、それぞれのイメージの主な訳し方をまとめておきましたので、参考にしてください。
基本の訳
- (3人以上で)順番に、次々に
※「A→B→C…」のイメージ - (2人で)順番に、交代で
※「A→B」「A←B」「A→B」… のイメージ
派生した訳
- A→B:次に、今度は、その結果、同様に、ひいては etc.
※「次に」のイメージ - A←B:それに応え、今度は、同様に、逆に etc.
※「お返し」のイメージ