「仮定法」を苦手にする受験生は多いです。これまで多くの受験生を見てきましたが、仮定法が苦手な理由はただ一つ、基礎を正しく理解していないということにあります。仮定法の基礎は決して難しくありません。ここでは、仮定法の苦手を克服するための、仮定法の基礎を分かりやすく説明します。
直接法と仮定法の違い
以下の2つの文を比較してみましょう。
- If I have time, I will go to see her.【直接法】
- If I had time, I would go to see her.【仮定法】
この2つの文は、どちらも
「もし時間があったら彼女に会いに行くだろう」
と訳すことができます。表面的な日本語訳ではなく、何がどう違うのか?ということをよく理解しなくてはいけません。
直接法 = 「普通にありうること」
以下の文を「直接法」と言います。
- If I have time, I will go to see her.
「直接法」という言葉にはあまり耳馴染みがない人が多いと思います。絶対に覚えろ!というほどの文法用語ではありませんが、参考書にはよく出てくる言葉ですので、ざっくり覚えておくことをオススメします。簡単に言うと「直接法」とは、「普通にありうること」と考えてください。
まず形について、If 節の中身が現在形で、主節の中身が will であることに注目してください。これは中学英語の頃から見慣れた、 If(もし~なら)の文 ですね。
この文は、ただの「条件」を表しており、文の中身は「普通にありうること」です。つまり「時間があったら彼女に会いに行くし、なければ会いに行かない」というただそれだけのことで、言ってみたらその可能性は五分五分。おそらくこの人は、それなりに時間がある人です。
仮定法 = 「ありえないこと」
一方、以下は「仮定法」の文です。
- If I had time, I would go to see her.
形は、If 節の中身が過去形で、主節の中身が would という助動詞の過去形が使われていることに注目してください。直接法の文の見慣れた形に比べると、これはちょっと変わった形で、見慣れないと違和感を感じるかもしれません。しかし、実はその違和感こそが大事なポイントです。
意味については、この文で言っている「もし私が時間があったら、彼女に会いに行く」と言っているのは、この人の「妄想」です。妄想ですので、これは事実ではありません。事実はその逆で「私は時間がないので彼女に会いに行くことはできない」、つまり、彼女に会いに行ける可能性はゼロなのです。
英語では、このように事実に反する、ありえないことを表現したいとき、違和感のある形を使い、「今自分が妄想をしている」ということを相手に知らせます。これが仮定法です。仮定法を見たら、反射的にそれは事実ではないということを理解し、その裏の意味(事実)を考える習慣をつけてください。
仮定法過去と仮定法過去完了の違い
では今度は、以下の2つの文を比較してみましょう。これらはどちらも仮定法です。
- If I had time, I would go to see her.【仮定法過去】
- If I had had time, I would have gone to see her.【仮定法過去完了】
「仮定法では違和感のある形を使う」ということを前に述べましたが、違和感のある形にも2種類あります。
仮定法過去 = 現在の事実に反する妄想
一つは、If 節の中身が「V過去形」のパターンで、これを「仮定法過去」と呼びます。主節の方は、直接法の will を過去形にした「would V原形」の形を使います。
- If I had time, I would go to see her.
「もし(今)時間があれば、(今)彼女に会いに行くのに」
事実:「(今)時間がないので、(今)彼女に会いに行くことはできない」仮定法過去の公式:
If S V過去形 , S would V原形
「仮定法過去」は、現在の事実に反する妄想を表します。見た目は過去形なのに、現在のことを述べているということに注意してください。日本語に訳す際も、それが現在のことだと分かるように訳しましょう。尚、主節の助動詞は would 以外にも、could や might など、助動詞の過去形を使うことができます。
仮定法過去完了 = 過去の事実に反する妄想
もう一つは、If 節の中身が「had p.p(過去完了形)」のパターンで、これを「仮定法過去完了」と呼びます。主節の方は、仮定法過去の「would + V原形」の時制をもう一つ過去にした形「would have p.p(過去分詞)」を使います。
- If I had had time, I would have gone to see her.
「もし(あのとき)時間があったら、(あのとき)彼女に会いに行ったのに」
事実:「(あのとき)時間がなかったので、(あのとき)彼女に会いに行くことはできなかった」仮定法過去完了の公式:
If S had p.p. , S would have p.p.
「仮定法過去完了」は、過去の事実に反する妄想を表します。見た目は過去完了形なのに、過去のことを述べているということに注意してください。日本語に訳す際も、それが過去のことだと分かるように訳しましょう。尚、仮定法過去と同様、主節の助動詞は would 以外にも、could や might など、助動詞の過去形を使うことができます。
まとめ/暗記ポイント
仮定法にはさまざまな応用パターンや慣用表現がありますが、全ては上に挙げた「仮定法過去」と「仮定法過去完了」の2つの公式が基本になります。仮定法を理解するには、とにかくこの公式を頭に叩き込んでください。
公式は「If S + V過去形, ・・・」という言葉と、「If I had time, ・・・」という例文をセットで暗記することをオススメします。それぞれがいつのときを表しているのか?ということを考えながら覚えてください。公式さえ頭に入れれば、仮定法は難しくありません。
覚えた人は、以下の確認問題にトライしてみてください。
- 「He will eat something if he is hungry.」と
「He would eat something if he was hungry.」と
「He would have eaten something if he had been hungry.」の違いは? - 「もし(今)時間があれば、(今)彼女に会いに行くのに」を英語で
(仮定法過去の公式) - 「もし(あのとき)時間があったら、(あのとき)彼女に会いに行ったのに」を英語で
(仮定法過去完了の公式) - If I was a teacher, I ( ) so much homework.
① didn’t give ② hadn’t given ③ wouldn’t give ④ won’t give - If it rains tomorrow, the tennis match ( ) canceled.
① would ② will ③ would be ④ will be - I ( ) you the truth if you had asked.
① will tell ② would have told ③ have told ④ will have told - If Tom ( ) here, I would ask him what to do.
① was ② is ③ will be ④ has been - She would have come to the party if she ( ) invited.
① will be ② would have been ③ had been ④ has been - If he ( ) me, he’ll be surprised at my hairstyle.
① sees ② saw ③ had seen ④ will see