no sooner ~ than …(~するとすぐに…)という重要な構文があります。これについて「なぜそのような意味になるのか」「理屈がわからない」「覚えられない」という声をよく聞きます。ここでは、no sooner ~ than … の考え方、覚え方について分かりやすく解説します。
倒置しない no sooner ~ than …
まずは、倒置をしない以下の例文について考えてみます。
- We had no sooner gotten home than it stopped raining.
(私たちが家に着くとすぐに雨がやんだ)
ポイント1:soon = early
この構文は、否定語の no が含まれているのでわかりにくくなっています。そこで、まずはこの no を取っぱらい、直訳してみましょう。
- We had sooner gotten home than it stopped raining.
(私たちは、雨がやむより早く家に着いた)
ここで、sooner を「より早く」と訳したことに注目してください。副詞 soon には、以下の2つの意味があり、ここでは2つ目の意味 early の同義語として使われています。
- もうすぐ、まもなく
- 早く[= early]
「早く」とは、もっと噛み砕くと「時期的に昔」ということです。ちなみに、early の反意語は late「遅く(=時期的に後、最近)」になります。
もしかしたら sooner が文中に割り込まれていることに違和感を感じる人もいるかもしれません。これについて軽く説明しておくと、副詞は文中での位置は比較的自由ですし、always, already など have[had] と過去分詞の間に副詞が割り込まれることはよくあります。もしそれでも分かりにくければ、以下のように考えてください。
- We had gotten home sooner [= earlier] than it stopped raining.
これなら見慣れた形だと思います。
ポイント2:「過去完了⇒過去」の文であること
次に、この文の時制に注目してください。前半が had gotten home という過去完了、後半が stopped raining という過去形になっています。ということは、事柄が起きた前後関係としては、
- 「家に着いた」⇒「雨がやんだ」
であることが明らかです。
図にすると以下のようになります。
had gotten home は、過去完了の用法の一つ「大過去」ですね。よって、
We had sooner gotten home than it stopped raining.
(私たちは、雨がやむより早く家に着いた)
という文は、言い換えると「家に着いた、そしてその後雨がやんだ」ということになります。
ポイント3:no = 差がゼロ
ではここで、本来の文である
- We had no sooner gotten home than it stopped raining.
(私たちが家に着くとすぐに雨がやんだ)
について考えてみましょう。
sooner という比較級の前に no があることに注目してください。比較級の前に置かれているものは、基本的に「差」を表します。例えば two years older と言った場合、older(年上)の差が「2歳」という意味ですね。no には「ゼロ」と言う意味がありますので、つまりここでは「差がゼロ」=「同じ程度」という意味になります。
また、no は否定語でもありますので、sooner(より早い)の意味を否定しています。つまり「早くない」⇒「遅い(=時期的に後)」ということを意味しています。それが「同じ程度」ということですので、「私たちが家に着いたのは、雨がやんだのと同じ程度に後のことだった」ということになります。このことについて詳しくは以下の記事を参照してください。
【関連記事】no more than / not more than / no less than / not less than の意味、違い、覚え方
さて、ここでまた、この文が「過去完了⇒過去」で構成されていることを思い出してください。「同じ程度」とは言いながら、やはり厳密に言えば、起きた順序は「家に着いた」⇒「雨がやんだ」なのです。
このことを図にすると以下のようになります。
この図を先ほどの図と見比べてください。had gotten home が stopped raining の方(後の方[=late寄り])に接近し、ほぼ同じ時点になりました。しかし、そこにはほんの少し時間の差があります。この状況こそがまさに「家に着くとすぐに雨がやんだ」ですよね。
というわけで、ここまでがこの構文の理屈の説明でしたが、この構文を目にしたときに、いつもこのようなことを考えていては時間がかかってしまいます。いったん理屈を理解したら、no sooner が含まれている SV を「SV するとすぐに」と考えて、前から訳すようにしてください。
倒置した no sooner ~ than …
ここまでのことが理解できれば、以下の倒置したパターンも簡単です。
- No sooner had we gotten home than it stopped raining.
(私たちが家に着くとすぐに雨がやんだ)
ポイント4:否定語が文頭 ⇒ 疑問文の形に倒置
「倒置」と一言で言っても、英語にはさまざまな倒置があります。ここでの倒置は「否定語が文頭に来た時には、疑問文の形に倒置する」というルールが適用されたものです。例えば
- I have never seen such a big bird.
- Never have I seen such a big bird.
(私はこんなに大きな鳥を見たことがない)
と言った具合です。よって、以下の書き換えが成り立ちます。
- We had no sooner gotten home than it stopped raining.
- No sooner had we gotten home than it stopped raining.
一点、気を付けて欲しいのは、倒置するのは no sooner が含まれている前半の文だということです。than 以降の後半の文は倒置する必要はありません。
【関連記事】it is not until ~ that … 構文の意味、使い方、例文
書き換えパターン
no sooner ~ than … にはさまざまな書き換え(言い換え)パターンがあります。文法問題ではどの形が出題されるか分からないので、全てしっかり覚えてください。
- We had no sooner gotten home than it stopped raining.
[= No sooner had we gotten home than it stopped raining.] - We had hardly [scarcely/barely] gotten home when [before] it stopped raining.
[= Hardly [scarcely/barely] had we gotten home when [before] it stopped raining.] - As soon as we got home, it stopped raining.
- The instant [minute/moment] we got home, it stopped raining.
(※the instant, the minute, the moment は接続詞) - Immediately [directly/instantly] we got home, it stopped raining.
(※immediately, directly, instantly は接続詞) - On our [us] getting home, it stopped raining.
(※our [us] は動名詞の意味上の主語)
この中の hardly ~ when … に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
【関連記事】hardly when の覚え方、書き換え、なぜそういう意味になる?
as soon as と no sooner than の時制について
as soon as と no sooner than を見比べてみたときに、なぜ as soon as は「過去⇒過去」で、no sooner than は「過去完了⇒過去」なのか?という疑問を持つ人がいるかもしれません。これについて私の見解を紹介しておきます。
まず最初に断っておくと、実は as soon as では「過去完了⇒過去」のことも、no sooner than で「過去⇒過去」のこともあります。決してこれらが間違いではないということは覚えておいてください。また、前後関係が文脈上明らかな場合、特にカジュアルな文では、本来過去完了を使うべきところでも過去形が使われることがあります。過去完了を使うか過去形を使うかは、実はなかなか微妙な問題なのです。
とは言え、実際のところ、as soon as は「過去⇒過去」で、no sooner than は「過去完了⇒過去」で使われることが一般的なのは確かです。ではこれはなぜなのでしょうか?一つには as soon as は非常に一般的な表現でカジュアルでもあり、no sooner than は文語的ということがあると思います。上で述べた通り、カジュアルな文では過去完了が過去形で代用される傾向があります。
また、小学館のプログレッシブ英和中辞典の as soon as の項目には、以下のような記述があります。
つまり、「過去⇒過去」の方が、2つの出来事の時制に差がなく、連続して起きているということを強調できるのでしょう。では、同じ意味であるはずの no sooner than ではなぜ「過去完了⇒過去」の方が好まれるのか?ここからは完全に私の推測ですが、as soon as がシンプルな従位接続詞であるのに比べ、no sooner than の方は「no + 比較級 + than」という複雑な構造をとっています。ましてや no が文頭に来て倒置されることすらあります。これが、おそらくネイティブにとってもシンプルではないため、せめて時の前後関係を「過去完了⇒過去」で明らかにしているのではないでしょうか?