名著ですが解説が少ないという評判の「基礎英語長文問題精講」の解説を補足しています。本書の解説と別冊の解答・解説をよく読んだ上で、疑問点がある方は是非参考にしてください。
本文
2行目:比例の as の見分け方
As women’s desires and expectations change, men’s attitudes towards women will also change.
【関連記事】女性の望みや機体が変化するにつれて、女性に対する男性の考え方も変化するだろう。
本書の解説にもある通り、ここでの as は「~するにつれて」という意味の「比例」の用法ですが、as にはいろいろな意味があるので、どの意味なのか迷うこともあるかと思います。結局のところ、文脈次第なのですが、その中でも「比例の as」は比較的高確率で見分けることができます。ポイントは以下の2つです。
- 比較級が使われている
- 変化・移動系の動詞が使われている
変化:become, get, grow, turn, change, develop 等
移動:go, pass, increase, rise, climb 等
例:You will grow wiser as you grow older.
上の例文では「比較級」と「変化の動詞」の両方が使われていますが、今回の本文のようにどちらか一方だけのこともあります。
11行目:concern「気遣い、配慮」
設問3 にも関連する語彙の解釈です。ここでの concern を「不安、心配」などとネガティブにとらえて、意味がよく分からかなった人もいるかもしれません。
たしかに concern を「不安、心配」と訳すことはあるのですが、concern の基本的な意味は「関係する、関与させる」だということを押さえてください。つまり concern の「不安、心配」とは「関係している周囲のことを気にかける」というニュアンスで、実は結構ポジティブなのです。実際、本書の和訳では「配慮」と訳されています。対照的に、worry という動詞は、ただ気をもむだけの心配を表し、ネガティブです。
仮にそれがよく分からなかったとしても、空所(3)の直後の stability は絶対にポジティブなので、それと並列されているということから、この concern はポジティブと判断してほしいところです。
14行目:感情の should
why should growth end or Japan lose its position in the economic world if the country’s human resources are used efficiently?
【和訳】もしこの国の人的資源が有効に利用されるとすれば、いったいどうして国の成長が止まったり、日本が経済世界においてその地位を失わなければならないのだろうか。
この should を「べき」と訳さないように注意してください。should にはさまざまな用法がありますが、その一つに「判断・感情」という用法があります。
- It is natural that he should do that.【判断】
(あなたが彼がそうするのは当然だ) - I’m surprised that you should say such a thing.【感情】
(あなたがそんなことを言うとは驚いた)
まず、should の基本的なイメージは「当然」であることを意識してください。、上の【判断】の例は「そうすることは当然」、【感情】の例は「そんなことを言うのは当然ではない」という気持ちが含まれているので、should が使われています。しかし、これを「べき」と訳してしまうとおかしな日本語になってしまいます。判断・感情の should は訳さないと覚えておいてください。
ところで「感情」にもいろいろありますが、この「感情の should」の「感情」は、「驚き、意外、不可解」に限られます。
そこで本文に戻ってみると、
why should growth end ~?
は、
「なぜ成長が止まるというのか(いやそんなはずはない)」
という不可解(当然ではない)の気持ちを表しており、この「感情の should」の一種だと考えられます。
本書の解説にもある通り、ここでの疑問文は修辞疑問文(反語)です。今回の文のように、修辞疑問文の中にはしばしば should が使われますが、
- 修辞疑問文の中で使われる should = 感情の should ⇒ 訳さない
と考えてよいでしょう。
23行目:take の裏返し訳
it would take more than this sort of compromise to damage it
【和訳(直訳)】それを損なうためには、この種の妥協以上のものを必要とするだろう。
【和訳(意訳)】この種の妥協くらいでは、それは損なわれないだろう。
似たような例をもう一つ挙げておきます。裏返し訳を練習してみてください。
It will take more than a cup of coffee to keep my eyes open.
設問
問2:oppose:本文8行目
9行目の understands の反意語として使われています
問4:industrial:本文13行目
「日本人=勤勉」という連想から 選択肢イの industrious を選んだ人がいるかもしれませんが、この文脈では「勤勉」は関係ありません。
この文は次の文で具体化されています。次の文(下線部(A))の中にある growth や economic という単語に注目して、これらの言い換え(関連語)として industrial(産業の)を選びます。
問5:worth:本文16行目
One good woman is worth more than any number of untalented men.
【和訳】有能な一人の女性は多数の無能な男性以上の価値がある。
文法・語法的になかなか面白い問題です。普通に worth を正解できてしまった人は、直後の more の品詞が何か?を考えてみてください。
実は、worth という単語は、形容詞と前置詞の性質を併せ持つ、非常に稀な単語です。
worth と言うと、worth ~ing という表現が有名ですが、worth は前置詞の働きがあるので、その後ろ(前置詞の目的語)には、動名詞 ~ing に限らず、普通の名詞を置くことができます。
- This book is worth fifty dollars.(この本は50ドルの価値がある)
この文は、
前半の「This book is worth」に注目すると、worth は形容詞=補語であり、
後半の「worth fifty dollars」に注目すると、worth は前置詞で、fifty dollars は前置詞の目的語になっています。
ただし、形容詞の性質があるとは言っても、叙述用法(補語になる)のみですので注意してください。worth book(価値のある本)のような名詞を修飾する使い方(限定用法)はありません。
また、This book is worth.(この本は価値がある) のような、worth の後に前置詞の目的語を置かない使い方もできません。
一方、選択肢エの worthy という単語はごく普通の形容詞で、限定用法(例:worthy challenge)も叙述用法(例:His work is worthy of praise.)もどちらも可能です。叙述用法の場合は be worthy of ~ という形になることが多いですが、of ~ がないこともあります(例:His invention is worthy.)。
というわけで、設問に戻ると
One good woman is ( ) more ~.
の more に注目します。ここでの more は一見副詞にも見えますが、名詞(より多くのこと)の用法もあるので、前置詞 worth の目的語になっていると考えます。つまり、ここでの more は名詞です。
「more を副詞と解釈してはダメか?」「worthy はなぜダメなのか?」と考える人もいるかもしれません。まず、more を副詞と考えるのは、worth の目的語がないことになってしまうのでダメです。かと言って、そこで worthy を使おうとすると、worthy には more worthy(または worthier)という比較級があるので、worthy more は語順がおかしいのでこれもダメです。
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