不定詞・動名詞の使い分けとその覚え方

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不定詞と動名詞の使い分けに悩んでいませんか?よくある説明の一つに「不定詞は未来志向」「動名詞は過去志向」というものがあります。この考え方はある程度有効ですが、残念ながら全てを説明できるわけではありません。かと言って、『メガフェプス』の丸暗記に頼り切りというのもどうかと思います。ここでは、不定詞・動名詞の使い分けとその覚え方について解説します。

to不定詞と動名詞の使い分けポイント

不定詞・動名詞の使い分けについては、ざっくりと以下のようなイメージや傾向があります。

to不定詞だけを目的語にとるもの

to不定詞の to は、もともと「方向(~に向かって)」を表す前置詞の to から生まれました。その名残で、to不定詞は「これから何かをしよう」という、未来志向積極的意図を表現する動詞と共に使われる傾向があります。例えるなら、何かに向かって進む「右方向の矢印 ()」のイメージです。

「未来志向」で説明がつくもの

未来志向」の不定詞は、「これから~すること」と考えることができます。

  • I hope to see you again.
    (私はあなたに(これから)また会うことを望んでいます)
  • I have decided to study abroad.
    (私は(これから)留学することを決めた)
  • He promised to marry me.
    (彼は私と(これから)結婚することを約束した)

これらの不定詞の動作(to see ~, to study ~, to marry ~)はいずれも、述語動詞(hope, have decided, promised)が行われた時点で、まだ実現していない、つまり未来のことです。to不定詞は、このようにほとんどを「未来志向」で説明することができます。

●「未来志向」で説明できる主な動詞
  • decide(決める)
  • expect(予期する)
  • hope(望む)
  • wish(願う)
  • mean(するつもりだ)
  • offer(申し出る)
  • plan(計画する)
  • promise(約束する)
  • seek(しようと努める)
  • refuse(拒否する)
  • can afford(余裕がある)

「行為と向き合っている」で説明できるもの

しかし、残念ながら「未来志向」では説明しにくいものもいくつかあります。例えば以下のようなものです。

  • He managed to climb up the Everest.
    (彼はなんとかエベレストを登り切った)
  • He pretended to be sick.
    (彼は病気のふりをした)
  • He failed to meet the deadline.
    (彼は締め切りを守らなかった)

例文はいずれもあえて過去形のものを選びました。これらは、述語動詞と不定詞の時制(例えば managed と to climb ~)を見比べてみたときに、不定詞が未来になっていません。時の前後関係について言えば「ほぼ同時」と言えるでしょう。

そこで、これらについては、「行為と向き合っている」と考えてみましょう。to の特徴である『右方向の矢印 ⇒』のイメージです。

例えば managed to climb ~ の場合「山に登る」という行為と向き合って、pretended to be ~ の場合「病人のふりをする」という行為と向き合って、それぞれその行為を成し遂げたということです。否定的な意味である fail to meet ~ の場合はちょっと分かりにくいですが、この場合も本来は「締め切りに間に合わせる」という行為と向き合っていたが、結局それを成し遂げることができなかった、と考えることができます。

●「行為と向き合っている」で説明できる主な動詞
  • manage(何とかやる)
  • fail(しない、できない)
  • pretend(ふりをする)
  • learn(できるようになる)

ちなみに、この「行為と向き合っている」という考え方は、実は「未来志向」で説明できるものも含め、不定詞を目的語にとる全ての動詞について当てはまります。つまり、「行為と向き合っている」とう考え方こそが、不定詞の根本のイメージと言ってもよいでしょう。このことは、「行為と向き合わない」イメージの動名詞と比較してみるともっとよく分かるはずです。

動名詞だけを目的語にとるもの

動名詞は、未来に向かうイメージのある不定詞と異なり、どちらかと言うと過去志向で、すでに起こったことや、これまでに事実になっていることに対処する動詞と共に使われる傾向があります。

「過去志向」で説明がつくもの

過去志向」の不定詞は、「これまでに~した(してきた)こと」と考えることができます。

  • He finished reading the book.
    (私はその本を読み終えた = 読んでいたことを終えた)
  • Let’s stop just talking and take action.
    (ただ話しているのを止めて行動に移そう = これまで話してきたのを止める)
  • The thief denied stealing the car.
    (その泥棒はその車を盗んだということを否定した)

これらの動名詞の動作(reading ~, talking ~, stealing ~)はいずれも、述語動詞(finished, stop decided, denied)が行われた時点で、すでに起こったこと、つまり過去の話をしています。特に deny(定する)について言えば、不定詞を目的語にする refuse(拒する)と比較すると、日本語訳は一見似ているようにも見えますが、refuse が「そんなこと俺やるつもりないよ」と未来の意志を否定しているのに対し、deny の方は「そんなこと俺やってないよ」と過去の事実を否定しており、未来志向と過去志向の違いがよく分かると思います。

●「過去志向」で説明できる主な動詞
  • admit(認める)
  • deny(否定する)
  • finish(終える)
  • give up(やめる)
  • stop(やめる)

「かたまりでイメージ」で説明できるもの

ここからが問題です。「過去志向」で説明できるものは上に挙げたものくらいで、残念ながら実はあまり多くありません。他のものについては、私は「動作をかたまりでイメージしている」と考えることをオススメしています。従来の説である「事実志向」に近い考え方ですが、「かたまりでイメージ」の方が何かと説明しやすいです。

そもそも動名詞とは「動”名詞”」という言葉からも分かるように、「動詞の性質を持つ名詞」です。不定詞が、名詞・形容詞・副詞的という3つの性質を持つのに対し、動名詞は「名詞」専門ですので、不定詞に比べ名詞的性質が強いと言えます。「名詞」なので、その動作をひとつのかたまりとしてとらえるのです。また「かたまり」には、その動作を最初から最後までイメージしているという側面もあります。それに対して不定詞の方は、ある動作の未来の開始時点のみをイメージしている感じがします。

まずは以下の2つの例文を見てください。

  • They will enjoy talking together.
    (彼らはみんなで話すことを楽しむだろう)
  • Let’s practice playing this song.
    (この歌の演奏を練習しよう)

例文はあえて未来時制(的)のものを選びました。practice や enjoy は「今までに(いつも)していることだから動名詞」と説明されることもありますが、この例文の場合は、目的語である talking ~ や playing ~ という動作はまだ実現していないので、説明が苦しくなります。

そこで enjoy talking ~ の場合は「一緒に話す」という行為を、最初から最後まで(少なくとも一定時間)イメージしていると考えます。その「話すこと」の一部始終を楽しむだろう、と言っているのです。practice playing の場合、「この曲を演奏すること」の一連の練習作業をセットとしてイメージし、それをやりましょう、と言っています。いずれも「動作をひとつのかたまりとしてイメージ」のが分かるのではないでしょうか。

次に以下の例を見てください。

  • She suggested going for a walk.
    (彼女は散歩することを提案した)
  • I don’t mind eating at the counter.
    (カウンター席でも構いません)

これらの例が興味深いのは、目的語の going ~ と eating ~ は述語動詞 suggested, mind の時点で実現していない、つまり明らかに未来のことだということです。はっきり言って、これらの動詞は未来志向です。「動名詞は過去志向」では説明することができません

これらについてはちょっと分かりにくいですが、「かたまりでイメージ」なら一応説明可能です。suggested going ~ の方は、「散歩に行く」という行為全体を頭の中で想像して、一つのまとまった考えとして提案したと考えることができます。mind eating ~ の方は、「カウンターで食事する」という行為全体をイメージしてから、そうすることは別に問題ないよと言っています。

●「かたまりでイメージ」で説明できる主な動詞
  • avoid(避ける)
  • suggest(提案する)
  • consider(よく考える)
  • imagine(想像する)
  • put off(延期する)
  • postpone(延期する)
  • mind(嫌がる)
  • miss(しそこなう)

miss(しこそなう)については、不定詞を目的語にする fail との区別に注意が必要です。failed to do の場合は「しようと思う」意志があったけどできなかった感じがするのに対し、missed doing の場合は、特別「しよう」という意志はありません。気付いたらある物事全体が過ぎ去っていたという感じです。また、miss には「~できなくて寂しい」という意味もありますが(例:I miss having you around.)、この意味の方は、あなたがそばにいない情景をかたまりとして思い浮かべているのがより分かりやすいと思います。

『動名詞』と『現在分詞』は同じ

上の「かたまりでイメージ」という考え方のベースになるのが、元来『動名詞』と『現在分詞』は同じものという考え方です。こう言うと、意外に思う人が多いかもしれませんが、実は英米の文法書では ~ing の形を「動名詞」と「分詞」に区別しないものが少なくありません。つまりネイティブの発想では、現在分詞も動名詞も同じ「~している」で、動名詞とは、何かを実際に「している」様子をありありと思い浮かべている「~していること」なのです。

例えるなら、現在進行形現在分詞)とは何かをしている「動画」的イメージで、動名詞とはその一部をキャプチャーした「画像」的イメージと考えると分かりやすいかもしれません。「画像」はもちろん動かない「かたまり」ですが、画像を見れば「あぁ、これはこの動作をしている途中だな」と動作全体をイメージすることができますね。

そう考えると、「過去志向」で説明できた例も、違う見方をすることができます。
例えば以下の例であれば

  • Let’s stop just talking and take action.

みんながぺちゃくちゃと無為な意見の言い合いをしている状況があったのでしょう。それを思い浮かべて「そんなことはもう終わりにしようぜ」と言っている感じがします。
以下の例であれば

  • The thief denied stealing the car.

自分が車の窓を割って(?)車を盗もうとしている状況を思い浮かべて「とんでもない、そんなことはしてないよ」と言っている感じがします。

動名詞が「~していること」だというこの考え方は、すぐにはピンと来ないかもしれませんが、実はこれが全てについて当てはまる動名詞の本質です。是非頭に留めておいてください。

「行為と向き合わない」で説明できるもの

また、動名詞にはもう一つの側面があります。それは、不定詞が「行為と向き合う」イメージなのに対し、動名詞は「行為と向き合わない」イメージがするということです。よって、「ある行為から逃げる」「ある行為をやめてしまう」というようなネガティブな意味の動詞と共によく使われます。

  • He is avoiding being involved with people.
    (彼は人と関わることを避けている)

この例は、人付き合いが苦手な人が、人と交わってワイワイやっている状況を思い浮かべて「あーそんなのやだやだ、一人でいるのがいいや」と人付き合いから逃げている様子が伝わってきます。

  • I put off answering her letter.
    (私は彼女の手紙に返事を書くのを先延ばしにした)

おそらくこの人は、彼女に手紙を書くのがおっくうな事情があるのでしょう。返事を書いている自分やそれを読んだときの彼女の状況を思い浮かべて「面倒くさいなぁ、返事書きたくないなぁ」と、逃げている様子が伝わってきます。

ただし、この考え方は、不定詞を目的語にとる fail to do や refuse to do の場合との区別が紛らわしいです。説明が一部重複しますが、fail to do の場合は、ある行為と向かいあい、達成するつもりだけどそれができない、ということであり、refuse to do の場合も、しっかりとある行為と向き合い、そのことを積極的に拒否する感じがします。不定詞を目的語にとるものは、逃げてはいないのです。

●「行為と向き合わない」で説明できる主な動詞
  • stop(やめる)
  • quit(やめる)
  • give up(やめる)
  • finish(終える)
  • miss(しそこなう)
  • put off(延期する)
  • postpone(延期する)
  • avoid(避ける)
  • escape(避ける)
  • deny(否定する)

ただしこの考え方は万能ではなく、enjoy, practice, suggest, consider など、物事を肯定的にイメージする動詞には当てはまりません。それでも、「逃げる」「やめる」系の動詞と相性がよいということは、動名詞について間違いなく言える一つの傾向です。

メガフェプスも捨てがたい

長々と説明してきましたが、不定詞・動名詞の使い分けを理解してもらえたでしょうか?もし「あー完璧に理解できた!もう暗記しなくて済む」と思ってもらえたら嬉しい限りですが、実際にはそう簡単ではないと思います。説明しておいてこんなことを言うのも何ですが、正直、直感的には理解しにくい説明もあったはずです。

おそらく多くの人が迷うのは、以下のパターンでしょう。

  • 動名詞が未来志向の動詞で使われることがある
    (suggest, consider, imagine, mind 等)
  • 不定詞がネガティブな意味の動詞で使われることがある
    (refuse, fail 等)

不定詞は未来志向」「動名詞は過去志向」は分かりやすい考え方ですが、すでに述べた通り、それだけでは全てを説明することはできません。特に動名詞の場合は注意が必要です。

例えば suggest の場合、たしかに意味的には未来志向ですが、「かたまりとしてイメージ」して提案するので動名詞です。しかし、不定詞は未来志向のものが多いので、どうして不定詞と結びつけたくなります。かと言って「かたまりとしてイメージ」を意識しすぎると、それじゃ「plan to do は『かたまりとしてイメージ』して計画してないのか?!」などと考え出し、わけがわからなくなるかもしれません。

逆に、refusefail の場合は、すでに述べた通り、それぞれ「未来志向」「行為と向き合っている」で説明できるので不定詞ですが、動名詞を目的語にとる動詞にはネガティブな意味合いものが多いので、動名詞と結びつけたくなる気持ちも理解できます。

「暗記に頼らない」「ネイティブの発想で考える」は確かに理想ですし、私自身も目指すところではあります。しかし、我々日本で生まれ育った人間は、どんなに頑張ってもネイティブと全く同じ「語感」を身につけることはできません。おそらく一生かかっても、suggest の本当のニュアンスを知ることはできないでしょう。

入試は時間との闘いです。「暗記に頼らない」あまり、思い出すのに時間がかかったり、ましてや間違えて覚えていたりしたら本末転倒です。結局、語学は覚えるしかないのです。今回説明した内容は意識しつつ、語呂合わせの「メガフェプス」を併用するのが現実的な戦略ではないでしょうか。理屈抜きで覚えたものが、何年も経ってから腑に落ちる、ということはよくあることです。我々はネイティブではないのですから、決して恥ずかしいことではありません。

ということで「メガフェプス」についても記しておきます。「メガフェプスだしー(megafepsdaci)」とすると、4つプラスで覚えられるのでオススメです。(※「だしー」は若者言葉の語尾(?))

● 動名詞のみを目的語にとる動詞

  • mind, miss2つ
  • enjoy
  • give up
  • avoid
  • finish
  • escape
  • put offpostpone, practice3つ
  • suggest, stop2つ
  • deny
  • admit
  • consider
  • imagine

mps がそれぞれ複数あるのが覚えにくいかもしれませんが、このようにしていっぺんに覚えてしまったほうがよいでしょう。複数ある e(enjoy と escape)の順番はどちらが先でも構いませんが、a(avoid と admit)については、連続する deny と admit が意味的に対(反意語)になっていますので、この順番で覚えた方が覚えやすいと思います。

ところで、「メガフェプスだしー」を覚えたはよいものの、「それって何だっけ?」となっては話になりません。「メガフェプスだしー」は「動名詞のみを目的語にとる動詞」だということをよく覚えておいてください。つまり、これら以外は不定詞を目的語にとります。

尚、「メガフェプスだしー」の中には stop を入れています。もしかしたら「to 不定詞 も後ろに来ることがあるじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、stop to do の場合の to do は目的語ではありません

  • She stopped smoking.
    (彼はタバコを吸うことをやめた)
  • She stopped to smoke.(※to stop は不定詞の副詞的用法)
    (彼はタバコを吸うために立ち止まった)

よって、stop は、forget や remember と同列で考えてはいけません。「メガフェプスだしーの後ろに来るものは動名詞」ではなく、「メガフェプスだしーの目的語になるものは動名詞」と考えることをオススメします

まとめ/暗記ポイント

  • 不定詞は、   志向 
  • 不定詞は、行為と向かい合って   イメージ 
  • 動名詞は、   志向 
  • 動名詞は、行為を    でイメージ 
  • 動名詞は、行為と向かい合って   イメージ 
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以下の記事で、不定詞・動名詞の使い分けに関する練習問題をたっぷりご紹介しています。今回はほとんど触れなかった forget, remember, regret, try などの問題も含まれていますので、是非チャレンジしてみてください。
【関連記事】不定詞・動名詞の使い分け 練習問題

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